━━海洋散骨にも繁忙期はあるのでしょうか。

 だいたい9月~11月が一番多いですね。お盆に家族が集まったときに「納骨をどうするか」「散骨をしたいんだけど」といった相談をされるんです。そうすると「散骨をするなら気候のよい秋のうちに」となるようですね。

 2019年9、10月は台風が週末に集中したために、その延期分も合わせて11月は過去最高の件数と売上となりました。

 年末から2月頃までは少し落ち着き、3月頃からまた忙しくなると思います。本来、散骨のタイミングは自由ですが、実際には四十九日を超えたあたりにされる場合が一番多い。葬儀社さんが一番忙しい時期にお亡くなりになられた方が、四十九日を迎える頃に散骨されるので、その分、後ろにずれてピークが来る感じです。

━━お客様は、御社サイトから直接ご依頼されることが多いですか?

 年々葬儀社さん経由での依頼も増えてきていて、それと自社ウェブからの受注とで半々くらいです。鎌倉新書の「いい葬儀」との連携もこれから強化していきたいと考えています。

粉骨に立ち会っていただくことで
ご遺族の心の蓋を開くことができる

━━お墓参りのようなメモリアルクルーズもありますが、利用状況はいかがですか?

 命日や故人のお誕生日の月に利用される方が多いですね。海洋散骨されたお客様へ1回分の無料乗船券をお配りしていることもあり、ご利用率は高いです。なので、ちょっと追いつかなくなってきていて。

 3ヵ月先まで予約が取れないようなことになってきたので、今後はチャーターのメモリアルクルーズなども企画していきたいと考えています。一周忌や三回忌に船をチャーターして供養しにいく文化を根付かせたいですね。

 あとは、当社が運営する「BLUE OCEAN CAFE」でお別れ会をしてから船に乗ったり、先に船に乗って降りてからここでお食事をしながら故人を偲ぶといったようなプランも最近増えてきました。

━━立会粉骨も「BLUE OCEAN CAFE」でされているそうですね。

 カフェの厨房裏に粉骨室があり、ご遺族にはできるだけ立会っていただいています。私は、立会粉骨自体がひとつのセレモニーだと考えていて、船に乗る前にここで一度しっかりとご遺骨と向き合う時間を持っていただきます。

 火葬場で一度蓋をしめた骨壺の蓋を開くことはめったにありませんが、また蓋を開けることでご遺族の心の蓋も開くんです。そこでまた故人とのいろんなお話をしていただけるので、内容の濃いカウンセリング兼打ち合わせができるんです。

━━立会粉骨はどれくらいの時間が必要ですか?

 だいたい1時間ほどです。このカフェができる前はご自宅へ引き取りにいってたんですが、ある日粉骨してお届けしたら「これ本当にお父さんのお骨?」と聞かれたことがあって。それは信頼していただくしかないのですが、実際に粉骨に立ち合っていただけば、取り違えの心配はありませんよね。

 全ての工程に立ち会わなくても、カフェでお茶を飲みながらお待ちいただくこともできます。とにかく自分の目で見ることが大事なのかなと思います。あと、水に溶ける袋にお骨を詰める作業は必ずご遺族にしていただいています。

 私は散骨の一番いい所は、自分の手で、自分のタイミングで、海に流すことができることだと思います。そうすることでご遺族の気持ちの区切りになるのではないでしょうか。

終活カフェで多彩なセミナーを実施
エンディングにまつわるいろいろな相談に答えたい

━━終活コミュニティカフェ「BLUE OCEAN CAFE」をオープンされたきっかけは?

 もともと海洋散骨をやっている中で、サロンみたいなものをやっていたんです。そこで散骨や終活の相談をお受けします、って看板を掲げたら、「私は散骨をしたいけど、その前のお葬式はどうしたらいい?」「相続でもめていて」「この辺にいい老人ホームないかしら」などいろんな相談を受けるようになったんですね。皆さん、そういうよろず相談をどこに持っていっていいのかわからないんだな、と思って。

 それで、もっと喫茶店のように自然に人が集まるところで気軽に相談できる場を提供できるといいなと。それにセミナーをできる場所も欲しかった。まぁ、学生時代ずっとカフェでバイトしていたのでカフェオーナーやってみたいな、というのもあったんですけどね(笑)。前の事務所が手狭になったこともあり、カフェもできる広い物件を探してオープンしました。

 スタッフは全員、終活カウンセラーの資格を持っているので、簡単なご相談はいつでも受けられます。ご相談いただいた内容に応じて、当社社員がさらに詳しい説明をしたり、専門家をご紹介したりもしています。

━━どういった終活セミナーを行われていますか?

 「海洋散骨と手元供養」や「エンディングノート」「メモリアルダイヤモンド説明会」「入棺体験」「看取り」「グリーフケア」「LGBT勉強会」とさまざまです。多い時は月に20回くらいやっていましたが、最近はだいたい月に10回前後になりましたね。

画像2: トップインタビューvol.13 株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役社長 村田ますみ氏

 散骨する方の6~7割の方は何かしらお骨を残されているので、手元供養に興味をもたれる方も増えてきました。また、LGBTの方の相談も受けるようになり、医療、保険、相続、葬儀などいろいろ課題があると知り、いろんな方と連携しながら解決につながるよう勉強会も実施しています。セミナーの中では、特に入棺体験イベントに人気がありますね。

━━棺に入ってお経を聞けるそうですね。

 おひとりずつ棺の中に入っていただき、その方のためにお坊さんにお経を詠んでいただいているのですが、棺に入る体験を通じて自分の人生の幕引きについて考えることができるんです。

 死について考えるきっかけにしたいなど人それぞれですが、老若男女幅広くご参加いただいています。リピーターもいらっしゃいますよ。

━━「BLUE OCEAN CAFE」で「ご近所ミニデイ」と「すみよしこども食堂」をされていますが、どのようなきっかけで始められたのでしょうか。

 もっと地域の高齢者の方と交流できる方法はないかと考えていたところ、介護度の低い要介護1、2の方への軽い体操とレクリエーション、おしゃべり、食事を提供する「ご近所ミニデイ」なら、介護の専門職がいなくてもカフェスタッフでお世話できると知り、やってみようとなりまして。

 江東区の地域包括センターと社会福祉協議会とお話する中で、こども食堂も助成金があると聞いて「一緒にやれば多世代交流ができる」と思って始めたんです。

 地域の方との交流を通じて、私たちが行っている海洋散骨について興味をもっていただけたらと思います。

画像3: トップインタビューvol.13 株式会社ハウスボートクラブ 代表取締役社長 村田ますみ氏

━━今後の展望について教えてください。

 カフェで地域の幅広い方々との交流を通じて海洋散骨だけではなく、お別れ会やお葬儀そのもののご依頼を受けることも増えてきました。終活だけに留まらず「いきかた」について考える場所として、さまざまな相談を受けながら、介護から供養までトータルに提供していきたいと思っています。

 また、ハワイでの海洋散骨も、現地の日本語新聞に特集されてから現地の方からお問い合せがくるようになり、体験クルーズを実施したところ、大変盛況でした。国内だけでなく現地の日本人の方にもさらに知っていただいて、ビジネスとして形にしていきたいですね。

画像: 書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします www.amazon.co.jp

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最近読んだこの本

村田社長に、最近読んだ本の中でおすすめの一冊をご紹介いただきました。

『君に友だちはいらない』瀧本哲史著

「数年前に買った本なのですがそのままになっていて。昨年夏、引越しする際に本棚の整理をしていたら、娘が『なんかヤバい本があった!』と見つけてきて。片付けないといけないのについ一気に読んでしまった本です。“友だちがいらない”というタイトルですが、チームビルディングについて書かれていて“仲間がいた方がアクセラレート(加速)する”と気づかせてくれました。

 2019年は当社にとって大きな変革があり、たくさんの優秀な仲間が集まってきて、ひとりじゃなくて仲間となら一緒にもっといい仕事ができると思えて。すごくいいタイミングで再会した本でした」

【プロフィール】村田ますみ(むらた ますみ)

1973年生まれ。大学卒業後、IT業界、花卉流通業界を経て、2007年株式会社ハウスボートクラブを設立し、東京湾を中心にパーティークルーズ事業と海洋散骨などのメモリアル事業を展開。2015年都内初の終活コミュニティカフェ「BLUE OCEAN CAFE」をオープン。2018年には「ご近所ミニデイ」と「すみよし子ども食堂」をスタート。2019年2月に株式会社鎌倉新書へ株式を一部譲渡し、グループ会社として地域に密着した終活・供養事業の発展を目指している。

▼ハウスボートクラブ公式サイト
https://hbclub.co.jp/

<ハウスボートクラブのキラリビトたち>


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