画像: 株式会社八木研 企画室 商品企画 課長 松木宏行氏

株式会社八木研 企画室 商品企画 課長 松木宏行氏

大阪に本社を置く株式会社八木研(以下、八木研)は、1932(昭和7)年に研磨剤の工場として創業した。1976(昭和51)年には企画メーカーへと業種転換し、寺院用品・仏具の業界へ進出。その後、1984(昭和59)年に、外観が家具のような「自由仏壇」を発表する。

当初は苦戦したものの、改良を重ねて1991(平成3)年に発表した「現代仏壇」は大きな反響を呼び、モダンな家具調仏壇のパイオニアとなった。今では一般的となったブティック型の店舗を業界に先んじて展開したのも同社である。

「ウォンツをカタチに」をコンセプトに先進的な商品を発表し続ける八木研の秘密を、商品企画の松木さんに教えていただいた。

部屋の中で引き立つものを意識して

━━今期、発表された「ネージュ」はブルーブラックの色合いや、内部の透かし彫りがとても印象的でした。

画像: 部屋の中で引き立つものを意識して

もともと、多少高価でも手の込んだ商品をつくりたいと思っていたところ、海外のおしゃれな家具にインスパイアされて、ネージュが出来ました。日本の家具はどちらかといえば作りやすさが優先されシンプルなものが多いのに対し、ヨーロッパの家具はとにかく手がかけられていてデザインも個性的で、新しい商品を考えるときのヒントになります。

━━デザイン検討にあたっては、やはり現代の部屋のインテリアに合うかどうかを重視されるのでしょうか?

インテリアに合うかを考えてデザインしているかといえば、そうでもないですね。よく「この家具は部屋に合う」という言われ方をしますが、本当に合っているかというと合っていないんです。

「部屋に合う」というのは2つあって、部屋の中ですごく引き立つものと馴染むものに分けて考えたほうがよいのではないかと思っています。実際のところ、部屋のインテリアに合わせた商品はすごく地味になってしまいます。ですので「合わせる」というよりは、部屋の中で引き立つもの、存在感はあるけれど違和感はないものになるように意識しています。

ネージュに関しては、部屋の中で存在感を放ってほしいと思って作りました。部屋のインテリアに合わせる、といったことはイメージしていませんでしたね。

━━なるほど。では、御社の現代仏壇で一番重視されている点はどこでしょうか?

商品化するときには「業界でまだ誰もやっていない」ことを意識しています。既にあるものを追いかけることは絶対にしません。常に新しい商品を提案していくことを心がけているのです。

既成概念に囚われず、お客さまも気づいていないような新しいものを生み出していこうとする姿勢が弊社で重視している点です。

━━それが「ウォンツをカタチに」ということなのでしょうね。その「ウォンツ」はどうやって見つけるのですか?

ウォンツ、つまり潜在ニーズは、まだ目に見えないものなので、ある程度はこちらから提案していくことになると考えています。企画担当者それぞれが日々情報を収集しながら、ストックした中からアイデアを出していきます。

マーケティング調査を行ってニーズを探すというよりは、ニュースだったり、街を歩いているときに感じたり、実店舗での接客や納品時にお話ししたりしたときに得た情報を、開発の際のヒントとして自分の中に落とし込んでおくということをしています。

また、メーカーの人と話したり、そこの得意技を取り入れるということも付加価値を生み出すのに重要です。

新しい素材や技術は、出会いから。

━━位牌に石やガラスを使うというのも、今までにない発想ですよね。これも潜在的なニーズを想定されたのでしょうか。

これはシンプルに、仏具にしたら綺麗だろうな、という考えから作りました。素材を選ぶときは、仏壇仏具の中にあって、それがどれだけ映えるかという点は意識して選んでいますね。

実は、仏壇に本革を使った商品があるんです。一般的に仏壇の業界では動物の素材を使うのはタブーとされてきましたが、弊社ではそういった素材にも意欲的に挑戦しています。幸い、エンドユーザーにも受け入れていただけたようで、本革を使用した商品はこれまでに数パターン、発表しています。

━━そういった、これまでの仏壇仏具にはない素材は、どのようにして見つけられるのですか?

素材も、技術もそうなんですが、出会いです。常に探していて、インテリアやギフト、建材などの展示会に行ってみたりもします。商品のほとんどは、そういった中で出会って開発がスタートする場合が多いですね。例えば、イタリアの工芸技術とか、日本の高岡銅器、漆塗りだったら輪島とか越前など、それぞれの産地の得意技を見て、この技術はこういう活かし方ができるんじゃないかと広げていくんです。

今年の新商品のひとつである「ウィロー」も、ウィリアム・モリスの柄が手刷りされた京唐紙を展示会で見つけて検討を重ねた結果、温かみのある北欧調の仏壇が生まれました。

もうひとつ、大事にしているのは「安定性」です。仏壇という商品の特性上、やはり使っているうちに変化してしまうような素材ではいけませんので、そこは注意しながら選んでいます。

安定性とデザインの共存という意味で、以前、技術面で苦労したことがありました。水が流れる様子を扉板に彫刻で表現した「アンテロープ」という商品です。

木の扉を削るというのは、とてもリスクがあって。木の板って表面と裏面を同じように削っておかないとどちらかに反るんですよ。デザインとしてはこうしたいけど、安定的な商品を供給するためには技術面でここが限界という部分があり、そのバランスをうまく取るのは非常に難しかったです。

結果的に、このサイズ感の仏壇としては高額な商品になってしまって、売れるかどうか心配でした。でも、新商品内覧会で展示したら、すぐにお客様が買ってくださった。その時に気付いたのは、高くてもそれだけの価値を実感してくだされば売れるんだと。

実は、その第二弾として出したのがネージュなんです。ブルー系の色や内部に透かしを入れるなど、そういう少し挑戦的な部分を取り入れて、惹きつける見せ場をつくることに腐心しました。

━━価格ではなくお客さまが求めているものが提供できた、「ウォンツ」に合う商品ができた好例ですね。別の視点で、お客さまの中で顕在化しているニーズから生まれた商品というのもあるのでしょうか?

椅子付きの仏壇などが、それですね。2002年に発表した「ポトス」という商品で、業界としても初めての試みだったと思います。その後、改良を重ねて出した「セダム」はヒット商品となりました。

他には、跳ね上げ扉も「従来の観音開きの扉だと意外と場所を取る」というお客さまの声から生まれた商品です。

画像: 写真:中山カナエ

写真:中山カナエ

祈りの原点を大切に
これからも革新的な仏壇を

━━これからの仏壇はどうなっていくと考えていらっしゃいますか?

10年以上前は、高さ150cmくらいのものも当たり前に売れていたのが、今は大きくても130cmくらいが限度。サイズは今後もより小型化していくでしょうし、デザインもどんどん削ぎ落とされていくのだろうと予測しています。

今の30〜40代の方が、これから仏壇を購入される層になっていきますが、この年代の方々は、デザイン性の良いもの、高い技術や良質の素材が使われているものに敏感で、今後、そういう意味でのシンプルかつ付加価値のある商品が増えていくのではないかと思っています。

━━「持たない暮らし」が注目されるなど、近年はシンプルな生活が好まれる傾向にありますが、それでも、大切な人に手を合わせることは別だと考えてる人もいらっしゃいますよね。

私たちも、祈るという行為はとても大切だと考えています。でも、どんなにシンプルになっても、必ずそこにストーリーは持たせたいですよね。ただ単に「これ、格好いいでしょ」というのではなく、なぜそういうデザインにしたのか、バックグラウンドはしっかり作っていきたいです。

画像: スカリナータ デリ アンジェリ 「天使の階段」という意味にふさわしい佇まい -写真:中山カナエ-- 1-butsudan.jp

スカリナータ デリ アンジェリ 「天使の階段」という意味にふさわしい佇まい

-写真:中山カナエ--
1-butsudan.jp

弊社では、現代の暮らしに合うコンパクトな仏壇も出しながら、グランクリュシリーズのような、壮大な商品を作ったりもしています。

世の中の動向に合わせることも必要である一方、やはり大切な存在をきちんとお祀りしましょうというメッセージも込めて、高級で存在感のある仏壇を発表したのです。そういったことは今後も続けたいなと思っています。

━━今後はどのような商品を作っていきたいですか?

低価格商品が台頭しつつある今こそ、モノの本質を伝えていける商品を開発したいと考えています。

実は、私自身、20数年前に電車の中で偶然、八木研の広告を見て衝撃を受けたんです。そのときは別の仕事に就いていたのですが、その印象がずっと心に残っていて。4〜5年経って転職を考えたとき、偶然にも八木研と出会い企画開発職として入社しました。

そのときの私のように、お客様に「こういう仏壇があってもいいんだ」「こういう仏壇が欲しかった!」と感じていただけるようなモノづくりができれば良いですね。

▼株式会社八木研公式サイト
https://yagiken.co.jp/

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