「自分と同じような体験を何人の社員にさせてあげられるか」
それがこれからの私のテーマです。

葬儀・墓石・仏具などの事業者とお客様をマッチングさせるポータルサイト「いい葬儀」「いいお墓」「いい仏壇」を運営する株式会社鎌倉新書。2000年から業界でもいち早くインターネット(以下ネット)を活用したサービスを開始しビジネス化することに成功。2015年には東京証券取引所マザーズ市場に上場し、2017年に同取引所第一部に市場変更するなど、大躍進を続けている。今回は、創業者の父から会社を承継し、ネット事業を開拓して業績を大きく拡大させた清水祐孝社長にお話を伺った。

供養業界向けのサービスを始めたきっかけは何だったのですか?

 弊社は名称からもわかるように、元々出版社でした。父が創業者で、主に仏教書や仏具関係の書籍を手掛けていたのですが、一般の方があまり手にしない専門書ばかりだったのでビジネスとして広がりがなく、私が入社した当時は業績不振で経営も悪化をたどっていました。そこで、仏教以外の産業に焦点を定めたサービスにもニーズがあるのではないかと考え、供養業界向けの業界誌や、葬儀業者がお客様に配る小冊子など、販促品としての印刷物を作成したのがきっかけです。

画像: 現在も月刊『仏事』(左)やイベント販促物などの出版物を手掛けている

現在も月刊『仏事』(左)やイベント販促物などの出版物を手掛けている

ネットでの展開を始めたのには何か理由があったのでしょうか?

 当時は印刷物をメインに展開していたのですが、ある時にお客様は印刷物を求めているわけではなく、掲載されている情報を求めているということに気づいたのです。そこで、弊社の方向性を出版業から「情報加工業」という位置付けに修正し、業界誌を作成する中で得た情報を紙媒体だけでなく、セミナーやコンサルティングの中で提供するビジネススタイルを確立しました。そうした展開を続けている中で、90年代の終わり頃にネットが普及し始めたのです。ネットも情報を伝える道具のひとつとして活用できるはずと可能性を感じ、「いい葬儀」「いいお墓」「いい仏壇」など、現在の事業の中心となっているサイトを立ち上げました。

当時のサイトはどのような内容だったのですか。

 最初は、単純に葬儀に関するよくある疑問に答えた情報を掲載しているだけのサイトでした。今のようなポータルサイトに変わる転機となったのは、サイトを見たという人からの一本の電話です。内容は「先ほど親が亡くなったのですが、葬儀社に知り合いがいないので紹介してほしい」という相談でした。そこで、業界誌を購読していただいていた葬儀社に電話をして、「近くの病院で親を亡くされた方がいるのですが対応してほしい」とお願いしたところ、すぐに葬儀の段取りをしてくれました。そのお客様は非常に喜び、この経験がのちのマッチングサービスを生むヒントになったのです。

画像: ポータルサイト「いい葬儀」のトップ画面。全国の葬儀社から選べるのが特長だ

ポータルサイト「いい葬儀」のトップ画面。全国の葬儀社から選べるのが特長だ

近年、家族葬が増えるなど葬儀への価値観が変容しています。現在の葬儀業界をどのように見ていますか。

 現在の葬儀や仏壇、お墓は一次産業が中心の時代に確立された風習です。つまり、人が生まれた場所で一生を終えることが前提であり、だからこそ檀家とお寺の関係も成り立っていました。ところが戦後、産業構造が変わり交通も発達すると、人は生まれた場所から離れて働き口を探し、それに合わせて住まいを移すなど、基盤である前提自体が崩れているわけです。それは信仰心が薄れたとか、親を敬う心がなくなったといった問題ではなく、むしろ世の中の変化に対して、従来の慣習を続けられなくなっただけの話なのです。

社会の構造上、こういった変化が起きるのは当然ということでしょうか?

 例えば、地方で生まれて東京の大学を出て、会社に入り全国を転勤して回っている人に「お墓を守れ」というのは酷な話です。葬儀についてもそんな生活形態ではコンパクト化するのは当たり前でしょう。ただ、長い人生の中で身内や友人の死に触れた時に初めて人生を考えるものであり、葬儀は死を見て生を学ぶ貴重な機会でもあると私は思っています。しかし、そうした葬儀の役割を葬儀社が広めようとしても「どうせビジネスのために葬式が必要だと言っているのだろう」と批判されかねません。そういう意味では私たちが“第三者の視点”で葬儀の必要性を伝えていかなければいけないと考えています。

今後、業界はどのように変わっていくと思いますか。

 葬儀は宗教的な「儀式」と、参列者のための「イベント」に分離していくのではないかと推測しています。例えば、近年は結婚式も「儀式」と「パーティー」で見ると、パーティーの要素を重視する傾向にあります。それと同じでお坊さんが主体となって進行する葬儀が、仲の良かった友人などが中心となる葬儀に変容しても不思議ではありません。その場合、葬儀社よりもハウスウエディングを手掛ける企業のほうが得意分野になります。そうしたことが起こる可能性も視野に入れながら、サービスの本質とは何かを考えていく時期なのではないでしょうか。

画像: 「すべてのサービスは形ではなく機能にこだわることが大事」と清水社長

「すべてのサービスは形ではなく機能にこだわることが大事」と清水社長

今後の展望を教えてください。

 今は事業戦略よりも組織づくりに力を入れてます。時代的にトップダウンで指示を下す組織の在り方は限界を迎えていると感じていて、ただ指示を待つだけの人材を生んでしまう恐れがあると考えているからです。理想は、組織の各所でプロジェクトの種がたくさん立ち上がり、すぐにスタートを切れる体制を築くことです。現場の人間の発案に対して権限がどんどんと降りていき、自由と責任を与える環境が整えば、どんな事業でも成功すると私は考えています。

会社全体のモチベーションが上がりますね。

 これからの私のテーマは、「自分と同じような体験を何人の社員にさせてあげられるか」です。私がこの会社に入った時、借金を抱えた状態からのスタートでした。だからこそ、経営状況を改善する事業を必死で考えたのです。もし、親が優良企業を立ち上げていたら、今頃はこの会社もなくなっていたかもしれません。なぜなら、きっとそのままの事業スタイルを継続していたはずで、時代の変容に対応できなかった可能性が高い。事業には必ず浮き沈みがあり、成熟期と同じことを続けていれば衰退期には必ず失敗するでしょう。ここ数年はほとんどの業界が縮小傾向にありますが、その中でも主体的に考えられる人材を何人育てられるか。これも私の仕事のひとつだと考えています。

プロフィール

清水 祐孝(しみず ひろたか)

1963年生まれ、東京都出身。証券会社勤務を経て1990年に父親の経営する㈱鎌倉新書に入社。同社を仏教書から、供養業界へ向けた出版社へと転換。さらに「出版業」を「情報加工業」と定義付け、セミナーやコンサルティング、インターネットサービスへと事業を展開させた。現在「いい葬儀」「いいお墓」「いい仏壇」「遺産相続なび」「看取り.com」など終活関連のポータルサイトを運営し、高齢者の課題解決へ向けたサービスを提供している。


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