画像: 難易度の高いチャレンジだからこそ人生をかけてやる意味がある(後編) - 株式会社鎌倉新書 小林史生氏

<トップインタビューvol.18 株式会社鎌倉新書 代表取締役社長COO 小林史生氏>

 鎌倉新書の進化の秘密と、今後の展望とは?
 2020年4月に代表取締役社長COOへ就任した小林氏へのインタビュー後編。

 前編はこちらから → 難易度の高いチャレンジだからこそ人生をかけてやる意味がある(前編)

今期はお客様の声をしっかり聞くところに注力していく

━━鎌倉新書のこれからについて、教えていただけますか?

 私たちは一言でいうと、終活のインフラになりたいと考えています。そのためにはお客様の課題や行動様式をしっかりと知る必要性がありますので、オンラインに加えて、オフラインでのお客様との接点をもっと作っていきたいですね。将来的には多くの事例をビックデータやAIの活用という形で発展させていけると思っています。だからこそ、今期はお客様の声をしっかり聞くところに注力していきます。

━━具体的にはどんなふうに進めていかれるのでしょうか。

 (前編でお話しした)NPSもそうですし、採用面ではお客様センターや相続コンサルタントなど、お客様と直に接する分野の人員を当面は強化していく計画です。1人のお客様にしっかり寄り添うことで複数のサービスを使っていただく、ビジネス的に言えばクロスユースが増加した結果、一客単価が上がり、各サービス視点での顧客獲得コストを下げることになれば、と考えています。

 組織面でも、これまで葬儀・お墓などサービスごとに部署が分かれていたお客様センターを、CX(カスタマーエクスペリエンス)という横串の部署に変更しました。これによりいくつかの効果が早速出ています。例えば生産性。お墓は3月・8月、葬儀は12月・1月・2月と忙しい時期が違うのですが、全体のリソースの最適化が図れます。

 さらに、お客様センターの社員が他のサービスの知識も身に着けられる良い機会となります。お墓のことだけではなく葬儀のこともご案内できる、仏壇も相続も対応できるというように、いわば終活コンサルタントのような人材が育っていくことになり、お客様にとっても社員のキャリアにとっても素晴らしいことだと思っています。

画像: 今期はお客様の声をしっかり聞くところに注力していく

━━今後も新たなサービスをどんどん出していかれるのでしょうか。

 そうですね。高齢者の方の課題って1個じゃないんですよね。例えばパートナーが亡くなられて介護が必要になって、老人ホームに行かなければいけないとか、その方に身寄りがなければ身元保証の問題があったりとか。遺言、相続をどうするか、残った家の売却とか節税対策も含めた保険加入、葬儀や仏壇の準備など連鎖しています。

 それらの課題をしっかり解決していきたい。その意味で、終活の領域でのサービスラインナップを増やしていくことが重要で、短期で多少儲からなかったとしても、中長期でみるととても重要だという判断で進めています。

━━つまり、ワンストップでなんでも解決していけるような?

 そうですね。非常に難易度の高いチャレンジで、終活領域でこれを実現できている企業は未だないのではないでしょうか。高齢者とそのご家族にとって、これからの時代、切実に必要とされていることだからこそ、終活のインフラを作ることは人生をかけてやる意味があるんじゃないかな、と思っています。

━━“終活のインフラになる”という目標に向かって他に進められている施策はありますか?

 これからのサービスは全て、ひとつの顧客管理システムに載せていくつもりです。いずれは、葬儀のサイトに来たお客さまが、相続のサイトでも問い合わせをしてくれる。その人がどういう情報を見ていて、どんなサイトから来ている、というようなデータが集まれば、個々のお客様に合った解決策を提案するといったことも多くの部分は自動化できるんじゃないかなと考えています。ちょっと壮大な話ですが。

 顧客データの統合は、葬儀と相続と仏壇に関するサービス領域では既に完了していて、今季中には「いいお墓」も対応を終える計画です。この統合が完了すれば、ユーザーごとにユニークIDが付与されて、我々の持っている情報をよりパワフルに使えると思います。

事業者様との対話や取り組みをもっと増やしたい

画像: 事業者様との対話や取り組みをもっと増やしたい

━━パートナー企業との関わりの面では今後、どのようなことを考えていらっしゃいますか?

 鎌倉新書は、お客様から「ありがとう」をもらうためのビジネスを進めていますが、自分たちだけでは完結しなくて、やっぱり事業者様との関係があってやっていける話だと感じています。だから事業者様と一緒にやっていくという姿勢を大切にしたくて、できれば年に1回くらい、全事業者様とリアルにお会いして、頑張りましょう!って一致団結できる場みたいなものをやれるといいな、と思っています。

 2019年の夏、エンディング産業展で初めて戦略共有会というのを開催し、300人くらいの方が来てくださいました。新型ウイルスの問題もあり、今年はどこまでできるかわかりませんが、まずは1,000人くらいに増やせると嬉しいですね。

━━「一緒にやっていく」の内容は、どのようなものでしょうか。

 今ですとコロナ禍で、あくまでお客様視点で考えながら、各業界でどういう取り組みをしていくべきか、という大きなテーマもあると思います。

 またもっと実務的には、葬儀を例に取ると、見積もりの出し方とか、我々からご紹介してからお客様へご連絡されるまでの時間であったりとか、個々の葬儀社様によってかなり違うわけです。石材店様もしかりで、送る資料の内容一つ、電話する営業の方の話す内容一つで成約率って大きく変わるケースがあります。成約率の高い事業者様の方法を参考にしながら、各社の成約率を上げるようなことも一緒に取り組んだりもしたいですね。

 それから、例えば、頑張ってらっしゃる事業者様の中でも、特に好評な事業者様を表彰させて頂くような仕組みとか。きっとご担当者や社長様も喜んでいただけると思っています。

━━エリア内の同業者さんと切磋琢磨する中でより良いサービスが生まれるということですね。

 まさにおっしゃる通りですね。例えば「いいお墓」では年間12万件以上のお問い合わせがあるので多くの情報が集まってきます。お客様が、どういうエリアでどういったものを探していらっしゃるかとか、私たちが持っている情報を解析して、石材店様やお寺様にご提供して、霊園開発に活用いただくとか。集客という販売支援だけでなく、少し上流の企画面までお手伝いさせていただくなどの形で事業者様のお手伝いをすることも私たちの役割だと考えています。

 そういった思いもあって、事業者様との勉強会だったりとか、先ほど触れた透明性を高める意味で鎌倉新書は何をしようとしてるのかを伝える戦略共有会をやったりとか、しっかりと対話する機会を増やすのが何よりも大切だと思っています。

「お節介なくらいのコミュニケーション」が私たちのカルチャー

画像1: 「お節介なくらいのコミュニケーション」が私たちのカルチャー

━━今後さらに事業が拡大し、社員数が増えていく中で、鎌倉新書の企業としてのあり方が変わるフェーズがやってくると思いますが、それをどうやって乗り越えていかれますか。

 そうですね。やっぱり重要なのは、ペンキを塗り直すように、経営理念とか会社のあるべき姿みたいなところを言い続ける、共有する努力ってとても重要だと思います。僕も経営メンバーの1人として大切にしたいです。

 別の視点では、楽天は100人規模のフェーズから、私が海外に赴任する頃にはグループで5,000人近い規模になっていて、そこからの学びもあります。会社のフェーズによって、活躍する人材って変わってくると思うんですが、重要なのは、外から優秀な人材が入ってきながらも、中の人材も育つことです。それが有機的に混ざりながらも、カルチャーや企業理念が薄まったり無くなったりしないで、鎌倉新書の原点みたいなところを残しながら人も組織も事業も成長していくことが重要なのでは、と思っています。

 ですので、今、採用を拡大している中でも、私たちがやろうとしていることに対して賛同してくれるかということと、カルチャーに合うかどうか、人柄とか考え方には結構こだわって見ています。

 ちなみに私たちのカルチャーというのは、「お節介なくらいのコミュニケーション」「協調性」「オーナーシップ」。この3つです。私は特にお節介なくらいのコミュニケーションっていい言葉だなと思っています。お節介って相手に興味があるからこそ、本音で一歩踏み込んで相手のことを考えるというところがいいんですね。鎌倉新書にあるこういうカルチャーがとても好きです。

━━鎌倉新書に入社されてからここまで経て、今後思うことは?

 ビジネス的な魅力ももちろんあるんですけど、これから自分の親や自分自身が使うサービスに携わりたいなってすごく思ったきっかけがあります。この領域で鎌倉新書がやろうとしていることは、すごく社会的意義があって、これを実践したい。しっかりやりきりたいなと思っています。色々大変なこともありますけど毎日楽しくやらせて頂いていることに感謝しています。

画像: 書影をクリックすると楽天市場のサイトにジャンプします。 books.rakuten.co.jp

書影をクリックすると楽天市場のサイトにジャンプします。

books.rakuten.co.jp

私が選ぶ、この一冊

小林社長に、おすすめの一冊をご紹介いただきました。

『成功の法則92ケ条』三木谷浩史著

アメリカ駐在時代、毎日髪の毛が全部なくなるんじゃないかというぐらい悩んでた時に、三木谷さんからこの本を手渡しでいただいて、この中に櫂というか自分がもう一回進むような原動力を感じて、大変な時に読み起こす本として大切にしています。裏面には三木谷さんのサイン入りで、“頑張って”と言葉をかけていただきました。

例えば、逆引きと積上げという話があって、「積み上げ」は一歩一歩改善していくこと、「逆引き」は月に行く目標があったからアポロは月に行けたって話があるんですけど、つまり本当に月に行こうとしたら既存の飛行機の改良ではなく、月に行くためのエンジンを作らなきゃいけないっていう発想を持つ必要がある、っていうこととか。あとは、さっきお話したような矛盾する2つのことを成立させることにビジネスの醍醐味がある、という話もぜひ読んでいただきたいですね。

画像2: 「お節介なくらいのコミュニケーション」が私たちのカルチャー

【プロフィール】小林史生(こばやし・ふみお)

1974年2月、石川県生まれ。関西学院大学文学部卒業、米デューク大学経営大学院経営学修士課程(MBA)修了。2000年に楽天株式会社へ入社。グルメ関連事業の責任者を歴任する。2008年より買収した企業2社の再生のため、計8年間米国に駐在。2社目では社長として陣頭指揮を執る。2017年、株式会社鎌倉新書へ入社。執行役員として「いい葬儀」を担当。その後、2018年に取締役、2019年より代表取締役COOを経て、2020年4⽉に代表取締役社長COOに就任。

▼株式会社鎌倉新書公式サイト
https://www.kamakura-net.co.jp/

<鎌倉新書のキラリビトたち>


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