火葬式でも、故人との最後の時間を
ゆっくり過ごしていただきたい
今回、ご紹介する「ご安置ホテルリレーション」は、株式会社リレーションが運営する家族葬・火葬式ホール。築30年のホテルを改装し、2012年に大阪市内では初めての「遺体ホテル」としてオープンした。
ご遺族にもホテルのような上質な空間とおもてなしを
直葬でお見送りされる場合であっても「故人といつでも対面できる」ことに力点を置いたという。大きい式を望まないけれど、しっかりお別れしたいと考える遺族に、故人との最後の時間を少しでも長く過ごしていただける場所を目指している。
既存ホテルを用途変更して
リレーションホテル改装の経緯は、当時、関東では既に火葬場の不足が始まっており、いずれ大阪でも問題が顕在化して需要が高まると見込んでのこと。改装は最小限に、ベッドを畳に変え、棺用のエレベーターを建物外部に設置した以外は、照明・壁など内装にはほとんど手をつけず当時のまま、利用している。ご遺体は最大13体の安置が可能。
その後の大阪の火葬場事情はと言えば、稼働時間を伸ばすなどして混み合う時期でも概ね2〜3日の待機で対応できているという。一方で、葬儀の形式にこだわらない遺族が増えつつある。特に大阪は、価値観の変わり目の速度が早く、この数年で簡素化の流れが急激に進行したそう。
リレーションでは、大阪での直葬需要は今後も加速度的に進むと見て、同様の施設をいくつか増やしていく計画とのこと。
リピートや口コミに助けられプロモーション活動は控えめ
チラシ配布は、ホテルの在る北区と近隣地域に2ヶ月に1回程度の頻度で行う。
口コミや、リピートくださるお客さまも少なくなく、宣伝をほとんどしなくとも認知はされているとのこと。オープン後、テレビや新聞等の取材が集中する時期が何度かあったことも大きい。
ご安置ホテルリレーションの全貌をご紹介
縦に長〜い葬祭ホール
大阪・梅田駅から徒歩圏内、高速道路インターチェンジからも車で10分と、市内からも遠方からも交通至便な立地。周囲は古くからの住宅地で小さな家々や商店街もあったそうだが、今はオフィスビルや工場、マンションが立ち並ぶ。
車で来られる方も多いため、近くのコインパーキングを利用してもらい、一定額を同社で負担しているとのこと。
1階はエントランス。スタッフが24時間常駐
1階エントランスは、ロビーと受付窓口のみ。スタッフは2名が常駐している。
2階は、最大15名のコンパクトな式場フロア
会葬者が10〜15名くらいであれば、ホテル内で通夜・告別式を行うことも可能。それより多くなる場合は、近くにある公営の斎場を利用する。
ご身内・同居の方だけの場合は、3〜5階の部屋を使って火葬式を行うことが多いという。
式場前の会葬者待合では、事前相談も可能。
事前相談や会葬者待合のためのスペース。
オープン当初はセレモニー会場とつなぐ形で80人規模の葬儀を行ったこともあるが、自社コンセプトと異なるとして、現在は小規模な家族葬のみ対応している。
ロフト付きの6階遺族控室
2階で式をあげる際、遺族が泊まるためのお部屋として使われている。以前はVIPルームとして使われていただけあって、広々として寛げる空間。
6階にある会食室では、式中初七日法要が営まれることも
ご安置ホテルリレーションから、火葬場までは車で約15分。お骨上げまでの時間、遺族の待合室として使っていただくこともあれば、式中初七日など法要を執り行うこともあるお部屋。
各フロアに吸熱装置付きの霊安室
吸熱装置は3台ある。「ご遺体の保存のみならず、こういった装置を使う方が二酸化炭素の排出を抑えるなど安全面からも良い」のだそう。
地域柄もあり、お客さまの4分の3は火葬式を選択されるそう。ご自宅出棺の予定で安置のみ承ることもあるし、納棺、シャワー湯灌を行うこともある。
大阪では従来、湯灌はあまり重視されていなかったそうだが、今では、同ホテルを利用されるお客さまの80%程度がオプションとして選択されるとのこと。
さまざまなスタイルの、各階遺族控室
3〜5階は同じ間取り。他の遺族さんと顔を合わせないように配慮し、できる限り各フロアは、ひとつのご遺族専用にご利用いただいている。
現在は葬儀一式として部屋利用料も含んだプランが主。もちろん安置だけの利用も可能(1室 税別3,000円から)。
ただし最近は、火葬式プランでも安置だけして自宅に戻られてゆっくりされる方も増え、ご遺族が滞在するケースは減少傾向。
各部屋にゆったりしたバスルーム完備
ご安置ホテルリレーションを利用されるご遺族の9割が、病院から直行されるそう。少しでも心身を休めていただけるよう、ホテル並のアメニティを取り揃え、遺族が何も準備しなくても安らげるように準備を整えている。
ゆったりした僧侶控室
2階の式場横にある、広々とした僧侶控室。以前は応接室として使われていたそう。
棺専用エレベーター
この建物の、そもそもの始まりは旧国鉄(現JR西日本)の単身者用宿舎だったという。設置されている館内エレベーターは定員6人の小さなものだったが、建ぺい率ギリギリで、棺を運べるサイズのエレベーターに替えたくても場所の余裕がない。
そこで、棺用のエレベーターを建物外に設置することにした。建築資材搬送メーカーの機械を選び、1センチの段差もできないよう、ミリ単位で調整しながら設置できる会社に依頼した。
建蔽率の課題も、エレベーターを建物外付けとし、周囲をソフトなカバーで覆う形であれば床面積に参入されないため、クリア出来たそうだ。
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詳細データ
ホール名 | ご安置ホテルリレーション |
所在地 | 大阪府大阪市北区中津6丁目9-24 |
商圏範囲 | 大阪市内全域 |
建物物件 | ホテルをコンバージョン |
立地の特徴 | 交通至便・火葬場が近い |
施行件数 | 月40〜50件程度 |
自社施設数 | 市内:1箇所 |
建物構造 | 鉄筋6階建て |
敷地面積 | 255㎡ |
建築面積/延床面積 | 167㎡/743㎡ |
オフィシャルサイト | http://www.relation-osaka.jp/ |
写真/中山カナエ