世界にひとつだけのお別れのお手伝い
オクリエ小鷹野(以下、小鷹野店)は、2019年11月にオープン。三河葬具愛心殿株式会社の家族葬邸宅「オクリエ」の3号店である。
三河葬具愛心殿は1971年に創業し、社葬や一般葬にも対応できる「セレモニーホール愛心殿」を軸に、愛知県豊橋市にて葬儀業を展開してきた。
まだまだ一般葬の割合も多い土地柄ではあるが、いずれ家族葬の需要が増えるだろうと先手を打つ形で、2015年よりオクリエブランドの展開を開始。2018年夏には2号店、そして2019年秋にシリーズ3店舗目となる小鷹野店と順調に店舗を拡大しており、手応えを感じているという。
送る家=オクリエ
小鷹野店は、遺族が故人を近くに感じながら最後のときを過ごせるように、あえて平屋で間仕切りを減らし、すべての部屋を見渡せるよう設計された。
近隣ホールと資源を分配し効率的な経営を可能に
JR豊橋駅から車で10分。セレモニーホール愛心殿から車で5分の距離にあり、安置室は愛心殿のものを共用。2号店からも車で10分と程近く、葬儀を希望された日に別の施行予定が入っていた場合は2号店にご案内できるなど、ドミナント戦略による効用を享受できる絶妙の立地である。

提携先での割引で、会員カードを日常的に活用
小鷹野店は、オープンの半年前頃から折込チラシやポスティングによる告知をスタート。
チラシは、当初は月2回程度、オープン直前1ヶ月は週1度配布した。
オープンから2日間、「特価市」を開催。野菜や果物、和菓子、お花など地元提携企業の協力を得て敷地内に出店を設け、割引価格で販売した。
来館者には、タマゴや日用品などのプレゼントと抽選会を用意し、当日入会すれば1万円の入会金90%オフ、さらに提携企業で使える金券1,000円分を進呈(つまり実質ゼロ円)。さらにお米もプレゼントするキャンペーンを実施。200人分準備したお米は、オープンから2日間で全て無くなったとのこと。
会員には葬儀プランの割引のほかに、約40ほどある豊橋市内の提携先(飲食店、生花店、士業事務所など)で会員カードを提示すれば、プレゼントや割引を受けられる特典がある。そのため、会員カードを日常的に持ち歩き、会員であることを想起する仕組みが出来ている。店舗で使うことにより人目に触れ、話題にしてもらえる相乗効果も。
その他、毎月の朝市やセミナー開催、会報誌郵送、提携店で買い物できる金券の配布など、きめ細かな会員フォローアップを継続している。
オクリエ小鷹野の全貌をご紹介
ガラス張りのオープンな外観

豊橋駅から車で10分。住宅街を抜け、広々とした直線二車線の通り沿いに建つ「オクリエ小鷹野」

道路に面した部分には、大きな窓のある事前相談室。
入り口は、建物横にある。もうひとつ奥の扉は出棺時に使用する

駐車場には軽自動車8台、普通車8台が収容可能。
隣の飲食店の窓から見える部分は、220cmの塀を設置した
地域の方が気軽に立ち寄れるように、とにかく明るく開放的な会館づくりを心がけたそう。
道路に面する窓は天井までガラス貼りで、歩道はもちろん道路を走行中の車からも館内がよく見える。
動線を左右に分散させる受付エリア

会館には2名のコンシェルジュが常駐する。
駐車場側にある入り口を入ると、正面に受付が見える。
左手には事前応接エリア、右側の通路を進むと会食室、ホールへと続く構造で、会葬者とそれ以外の来訪者との動線が重ならないよう配慮されている。
まるでサンルームのような事前相談室
特徴的な明るいつくりは、2号店のスタイルを踏襲した。2号店は自動車のショールームを改装したため、外から室内がよく見える。結果として、開放的で地域の方が入って来やすい雰囲気が生まれ、事前相談の増加につながったのだそう。

入口から入ってすぐ左手に広がるロビー。
通りを歩く人からも商談の様子がよく見える。これが入りやすい会館づくりのポイント

ロビー最奥部から、受付に向かって撮影。
受付横の引き戸を閉めれば、式の最中でも落ち着いて来訪者をお迎えできる
静穏な雰囲気をたたえたホール
ダークグレーをベースに、濃いめのベージュを差し色にした落ち着いた空間。
遺影は、祭壇のモニターに投影する。遺族のご希望があれば故人の思い出シーンを集めたスライドショーを流すこともあるとのこと。

両サイドの木枠や、ダークカラーのランプシェードが空間にリズムを生み出している

使用しないときはコンパクトに収まる祭壇

祭壇横には収納棚を設置。使用頻度の高い道具や機材を収めている
柔らかなグレーが心落ち着く会食室
間仕切りを開くと、ホールから会食室、遺族控室までがひと続きになる。
会葬者と遺族が、故人を偲んでゆったりと会話ができる空間がつくられている。

スタイリッシュでありながら穏やかな空間。
ホール、会食室ともにランプシェードにこだわった

無料のドリンクサーバやコインロッカーを設置。
奥に見えるドアは「多目的室」

多目的室の内部。
授乳室や更衣室として使われている
遺族控室
〜いちばん長く過ごす場所だからこそ寛げる空間に
遺族は、ホールにいる時間よりも控室で過ごす時間のほうが長い。それならば「控室をいかにくつろげる空間にするか」が重要ではないか。
そういった思いから、オクリエシリーズは遺族が故人との最後の時間をゆっくりと過ごせることを最優先に設計されている。
家族で寛げる大きなソファの横には、棺が安置できるスペースがあり、故人をひとりにすることなく同じ部屋で最後のひとときを過ごせる。

棺の安置スペース。遺影や供物を置ける台も設置。
床が濃い色の部分は土足エリア。靴を脱がずに棺をスムーズに運搬できる

小さいお子様用に、ぬりえや折り紙などを用意

2018年の台風による大規模停電の経験から、非常用ランタンやラジオを常設している

窓のある、ゆったりとしたキッチン
遺族寝室は、やっぱり和室がいちばん
リビング奥に続く和室は、遺族の寝室としても、納棺式の場としても活用される。
一面だけ貼られた和風花柄の壁紙が、部屋を和やかな空気に。

隣の飲食店の窓と近接しているため、窓は摺りガラスとロールカーテンでさり気なく目隠し

この部屋で納棺式を執り行うこともある
ゆとりあるバスルーム、パウダールーム
キッチンに隣接するシャワールーム。更衣スペースも十分にゆとりがあり、無料のアメニティやタオルも準備されている。着替えさえ持ってくれば、気持ちよく一晩を過ごすことができる。

他人と共用のバスタブを好まない方も増えているため、シャワーのみにしたそう

アメニティも使い捨てタイプをご用意。
ストッキングの替えを販売してくれるのは、女性に心強いサービス

明るく清潔なパウダールーム
最大4名様まで…僧侶控室
まだ一般葬も多い地域ゆえ、家族葬でも宗教者が複数人で来られることもあるのだそう。そのため、最大4名にお入りいただける部屋を用意。

バリアフリーへの対応
参列者は、高齢の方や小さなお子様連れの方などさまざま。誰もが心地よく故人を送り出せるよう、バリアフリーな設計を意識した。
遺族控室からホールまで一切段差のないつくりにし、ホール横には授乳もできる多目的室を設置。
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詳細データ
ホール名 | オクリエ 小鷹野店 |
所在地 | 愛知県豊橋市牛川通五丁目9-3 |
商圏範囲 | 車で10分 |
建物物件 | 新築 |
立地の特徴 | 住宅地 |
総投資額(土地代含まず) | 8千万円 |
設計者 | 株式会社インタージャンク |
施工者 | 有限会社エーシーアシスト |
施行件数 | 2件(オープンから1年未満の実績) |
自社施設数 | 市内:3箇所目 / その他の施設:セレモニーホール愛心殿 |
建物構造 | 木造1階建て |
敷地面積 | 743.61㎡ |
建築面積/延床面積 | 215.53㎡/213.83㎡ |
オフィシャルサイト | http://okurie.com/ |
写真/酒井俊春