2019年10月4日(金) 、「ENDEX2019特別セミナー」が開催された。「葬祭業の100年企業を目指すには」をテーマとしたセミナーの概略をお伝えする。
1.働き方改革、経営者の高齢化、採用難・・・
これから起こる葬祭業界の時流について
講師の日本葬送文化学会会長 福田充氏は、「平成の時代には葬儀の分野に大きな変化があり、未来を予測するための土台として欠かせない」として、平成の31年を10年ごとに区切り、その歴史を振り返った。
平成初めの10年は、バブル経済崩壊、阪神・淡路大震災が起こった時期。
永代供養墓の原点となる合葬墓、散骨・樹木葬などの自然葬、納骨堂など新しい供養スタイルが登場。
雑誌「SOGI」「月刊フューネラルビジネス」「月刊仏事」の創刊により、雑誌やマスコミを通じて新しい商品やサービスなどの情報提供が行われるようになる。
さらに、これまでの自宅葬からホール葬が主流となり、鉄道、JAなど不動産を保有する企業が葬儀業に参入してきた。大阪公益社やティアなどが東証一部に上場し、葬儀社が社会的に登場したのもこの時期。
次の10年には、米同時多発テロ、リーマンショックなどが発生。
「家族葬」が台頭し、関西では香典辞退の風潮も高まる。そのほか、葬儀をしない「直葬」や「1日葬」が普及して、葬儀の規模がどんどん縮小した。
従来の電話帳広告だけでなくコールセンターも集客に利用されるように。
最後の10年は、やはり東日本大震災の影響が大きい。
多くの死に直面する中でも、家族葬、直葬すら必要ないという考えが出始め、葬儀だけでなく仏壇、お墓など昭和の時代に作られた供養をそのまま受け入れたくはないという時代に。
業界全体としては、経産省等の意向により互助会の再編が進められており、大手が中堅互助会を吸収することで資本力がさらに強まっている。
また、インターネット紹介サービスが葬儀件数を上げる方法として重要になってきた。
このような状況の中、葬儀社が生き残る鍵は、“どうやって顧客を集めるか、自社の営業の仕組みを見直すこと”、“件数をあげるために会館を作ること”、“インターネットによる葬儀紹介サービスを活用すること”の3つに絞られてきている。さらに葬儀単価が毎年2%ずつ下落する中で、どう単価を上げていくかも重要と締めくくった。
2.これからの業績アップのために葬儀社がやるべき働き方改革
〜全国100の事例から〜
講師は、株式会社船井総合研究所(以下、船井総研)の光田卓司氏。
葬儀の単価を下げても、効率的な運営体制を作り、コンパクトなホールを増やすことで件数アップし、利益率を向上させれば、従来のモデルと変わらない。
また働き方改革が求められる中で必須の対応として、
・分業化すること。そのためには、コンタクトセンターをハブとして使う。
・CRM(顧客管理システム)の導入は必須。顧客満足度も高まり、アフターサービスへのテコ入れも可能。
・人材配置担当者を活用する。人材配置担当者と施工担当、受注担当とは上下関係ではなく、それぞれの役割として、重要な任務・役割である、ということを社内にしっかり認知させることが、新しい役割・役職の場合は特にポイントである。
などを挙げた。
3.100年継続企業の事業継承の秘訣
講師は、船井総研の中野宏俊氏。同社でも事業承継のためのM&Aの相談は増えているそうだ。現在、日本には321万社の中小企業が存在し、そのうち業歴100年を超える会社は1%の3万3259社(※1)。
これらの会社の共通するキーワードは「勇気、倹約、慎重」
基本的には財務をちゃんと見て倹約、慎重に事を進め、会社としてのアイデンティティやブランディングを大切に守る一方で、乗るべきときは時流に乗って新しいことに挑戦する勇気を持っている。
加えて、親族内承継が主流の日本においては、親子間のコミュニケーションがしっかり取れていることも事業継承成功の秘訣とも。
4.まとめ講座 〜本講座後、即実行するノウハウは?〜
最後は、船井総研の柴崎智弘氏による、まとめ講座。
ここまでの3つの講座を総括した上で、これからの6年で経営者の引退年齢と言われる70歳を迎える方が245万人になる、と続ける。事業承継の手を打たないでいると、そのうち30%、127万人が後継者を得られずに廃業するとのこと。経済価値に換算すると22兆円のGDP損失、650万人の雇用が失われると推定されている(※2)。これは大問題だと、国も本腰を入れて対策を進めているところだそう。
そして、「今日は良い話を聞いたなぁと終わらせてはだめ、良いと思ったらすぐにやる、短期間で実績を上げるためには他人の助力を得ることも大切」と結んだ。