終活は「死に支度」ではなく「生き支度」
その価値を広めていくことが私たちの役割です。

「終活カウンセラー」の生みの親であり、自身も終活カウンセラーとして活動している武藤頼胡氏。「終活」の大切さを一般目線で伝えるため、協会を立ち上げた当時から継続して巣鴨や浅草でアンケートを実施するなど、精力的に活動している女性起業家だ。そんな武藤代表に、「終活」の必要性や、普及していく上での課題などを伺った。

終活を広める活動を始めたきっかけを教えてください。

 以前はベンチャー企業に勤めていたのですが、2009年に通勤電車が苦手という理由で個人事業主になりました。今思えばかなり勢いまかせでしたが、思い立ってすぐに屋号を決めて名刺を作ったのです。でも、肝心の何をやるかを決めていなかった(笑)。 
 いざ起業してから気づいたのが、世の中にどんな仕事があるかを実は知っているようで知らないことでした。まずは社会を詳しく知ろうと思い、知り合いの経営者の方々に片っ端から電話を掛けて回ったのですが、その中の一人が私の地元の静岡県三島市にある葬儀会社の社長だったのです。それが葬儀業界に関わるきっかけでした。

経営者の中でお会いしたのが葬儀社の社長だったのですね。

 葬儀社の仕事がどんなものか、興味が湧いたので、すぐに社長に会いにいったのですが、偶然その日に「お葬式セミナー」をやっていたのです。そんなセミナーがあることに驚いて、早速参加してみました。その後、講師の方と名刺交換をさせていただいたのですが、そのときに「事務所に遊びにおいで」と言っていただき、「これは何かのご縁に違いない」と思い、それから1年半の間、その方のかばん持ちをしながら葬儀について学びました。

画像: かばん持ちをしながら約90回のセミナーを経験したとか。「かなりハードな日々でした(笑)」と武藤氏

かばん持ちをしながら約90回のセミナーを経験したとか。「かなりハードな日々でした(笑)」と武藤氏

すごい行動力ですね。

 学びたいとこちらからお願いしてついて回っていたので、ほとんどお給料はもらわずにセミナー活動のお手伝いをしていました。結果的に、そこで学んだことはとても大きなものでしたね。せっかくついていくならと、クライアントがどういった目的でセミナーを開き、どんな方が参加して、来場者がどういった考え方をしているのか。自分の中で毎回レポートにしてまとめていきました。
 そこでわかったのが、多くの高齢者の方は「人の死について語ることは縁起でもない」という考えをお持ちで、普段の生活の中で葬儀について具体的に質問する場所や機会がないということでした。

「具体的に質問する場所や機会がない」とはどういう意味でしょうか?

 例えば、葬儀の価格や手続きの方法などは、葬儀社に直接聞くことができます。でも、「戒名に支払う金額の相場は?」だとか「検体を希望しているが、家族にどう伝えればいいか?」など、葬儀にまつわることであっても、少し分野が違うものについて相談できる相手がいないケースも少なくありません。そうした方々に、葬儀を含めたさまざまな疑問を解消する場を提供できないかと考えるきっかけになりました。

画像: 2010年8月に「終活」という言葉を知り、その日のうちにウェブサイトを立ち上げたという

2010年8月に「終活」という言葉を知り、その日のうちにウェブサイトを立ち上げたという

終活カウンセラーの役割とは?

 葬儀やお墓、または相続といったさまざまな専門家と一般の方をつなぐコンシェルジュだと言えばわかりやすいかもしれません。生前に何をしておけばいいのか、疑問や不安があっても、いきなり法律に詳しい弁護士などに相談に行くことはなかなか難しい。そのハードルを低くするのが終活カウンセラーの役割です。
 病気に例えるなら、お腹が痛かったら内科に、頭が痛かったら脳外科にと、診てもらう医者ははっきりしています。だけど、肋骨の間の筋肉なのか、骨なのか、判別できない場合、誰かに「何科にいけばいいかな?」とききたい時ってあると思います。終活カウンセラーは「終活」のこの部分を担う、水先案内人なのです。

元気なうちから始める! こじらせない「死に支度」

終活のプロとして「終活カウンセラー」1万5000人を育て、たくさんの終活相談にのってきた著者だからこそ語れる、最低限知っておきたい「60のエッセイ」。併せて「武藤式エンディングノート」も収録。

カウンセラーの立場から見た「終活」の定義をお聞かせください。

 終活はある意味、歯磨きのようなものなんですね。要は虫歯にならないための予防。しかも、幼い頃から習慣的に行います。では、なぜ歯磨きをするかというと、虫歯を防ぐという目的はもちろんありますが、歯を大切にすることでおいしいものを生涯を通じて食べるためでしょう。
 それと同じで、なぜ終活をするかというと、万が一の時に困らないことが目的ですが、もっと先にある目的は、不安を取り除いて今ある生活を楽しむためなんです。だから、捉え方としては「死に支度」ではなく「生き支度」だと伝えています。

画像: 2018年5月に大阪で開催した「第340回終活カウンセラー初級検定」の様子

2018年5月に大阪で開催した「第340回終活カウンセラー初級検定」の様子

実際に終活を行っている人が少ない現状をどう見ていますか?

 価値の問題だと思っています。人は自分に必要だと思うことに時間を使って行動しますよね。葬儀やお墓がコンパクト化していることだって、コミュニティの希薄化だけが原因ではないと思うのです。
 興味あるものには自然と人は集まります。実際に、親せきやご近所との付き合いがない人たちも、趣味仲間とは集まるもの。その意味で、世の中に終活を浸透させるには、いかにして私たちが熱意をもって価値を伝えられるかにかかっていると思います。そのためには、まず自分自身がどれだけ終活に価値を感じ、信じているかがひとつのポイントにはなるでしょう。

今後予定している活動はありますか?

 2019年の3月3日に大田区産業プラザPiOで「終活フェスタ2019 in 東京」を行う予定ですが、新しい形で開催したいと考えています。これまでのような大型のブースを設けるのではなく、小型のテーブルをたくさん用意して出展者と対面で会話をしやすい形式にすることで、来場者がより多くの企業や終活カウンセラーと話せるように工夫したいと思っています。
 イメージでは、展示会というよりもコミュニティ広場でしょうか。仰々しいイベントではなく、一般の方が気軽に参加でき、出展者は来場者との対話が中心になるので、商品やサービスを得るだけでなく、来場者からの情報収集や、新人研修の場としても活用してもらいたい。目指しているのは、高齢者のコミュニケーションの場です。皆さん、期待していてください。

プロフィール

武藤頼胡 (むとう よりこ)

1971年生まれ。保険会社やベンチャー企業を経て、2009年に独立。その後、2011年に一般社団法人終活カウンセラー協会を設立する。「ひとり一人が生き甲斐の持てる世界を創る」ことを目指して全国各地で、年間200回以上の講演を担うセミナー講師として活躍中。TV、新聞、雑誌にも多数出演。リンテアライン株式会社代表取締役社長、一般財団法人葬務事業振興会理事、明海大学ホスピタリティ・ツーリズム学部ホスピタリティ・ツーリズム学科外部講師、一般社団法人日本医葬連携協会理事などを勤める。

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