介護M&A支援センターを運営するブティックス株式会社(東京都港区、代表取締役社長 新村祐三氏)は、日本国内における介護事業所の売却・買収希望先に関する同社のデータを公開した。

1.売却希望企業について

画像1: 1.売却希望企業について

①業態別 売却希望事業ランキング
売却希望企業の業態で一番多かったのは「デイサービス」。以前は介護業界の中では比較的収益性の高い業態だったが、2015年の報酬改定に引き続き、2018年の報酬改定でも大幅な減額改定となり、小規模デイサービスを単独で運営している事業所を中心に収益性の悪化が進んだ。中でも、「機能訓練型デイサービス」や「お泊まりデイサービス」の業態については、売却の問合せが多い傾向にある。
また、二番目に多かったのは「住宅型有料老人ホーム」だ。土地建物をサブリース形式で賃借することで、初期コストを抑えて開業することができるため、30床以下の小規模な有料老人ホームを中心に全国で一気に供給が増加したが、訪問介護やデイサービスに対する報酬の減額改定に加えて、同一建物減算の影響もあり、単独での運営継続に限界を感じて売却の問合せをされるケースが多い傾向にある。

②主なジャンル別売却希望割合
図2のグラフは、居宅介護(デイサービス、訪問サービス等)、施設介護(老人ホーム、グループホーム等)、医療系(病院、クリニック、薬局等)、障害系(放課後等デイサービス、就労支援等)、その他に分類した場合の売却問合せ割合になっている。居宅介護が半数以上を占め、次いで施設介護となっているが、後継者のいない病院や障害系サービスも増加傾向にある。

③売却理由ランキング

画像2: 1.売却希望企業について

次に、図3は売却理由ランキングとなっている。全業態を通して、一番多かったのが「採用難」だ。エリアや職種によっては有効求人倍率が5倍を超えることもあり、多くの事業所で採用難に頭を抱えられているようだ。オープニング時のスタッフを集めることができず、施設を稼動できない事業所の相談も増加している。

二番目の「事業の選択と集中」は、最近急増している売却理由。もともと介護事業以外を本業としていた会社が多角化で介護事業に進出したものの、「本業回帰」のために介護事業の売却を検討するケースが多い。また、大手中堅の介護事業者の中には、非中核事業を売却して、得意な中核事業に集中するケースも増加している。例えば、非中核エリアの関東圏のグループホームを売却して、本社のある関西圏のグループホームを買収する「エリアの選択と集中」や、非中核事業の訪問介護を売却して、注力事業であるデイサービスを買収する「業態の選択と集中」等があげられる。

④成約しやすい業態

画像3: 1.売却希望企業について

図4は、問合せの多い上位5業態について、問合せ割合と成約割合を比較することで、成約しやすい業態を分析した表になっている。

成約割合÷問合せ割合=成約指数とした場合、一番成約指数が高いのは「訪問看護」となった。スタッフの確保やマネジメントが上手くいかずに売却を検討するケースが増えている一方で、介護保険とは別に医療保険の収入が見込めることから、異業種からの参入意欲も旺盛で、人気業態となっている。

また、売却の問合せ割合上位5業態の内、4業態までが、成約指数で1倍を上回っているのは、単体では収益確保が難しい事業所においても、複数事業所をドミナント展開することで収益化が可能となることから、売却ニーズを捉えて積極的にドミナント戦略を進める買い手が多く存在していることを表していると言える。

逆に成約指数が低かったのが「グループホーム」だ。より詳細に分析してみると、比較的収益性の高い2ユニット以上のグループホームの成約指数は1.40倍であるのに対して、1ユニットのグループホームの成約指数は0.18倍とかなり低い水準となっている。総量規制もあり、手堅い事業として人気のグループホームだが、実際に人気が集中するのは2ユニット以上の規模が中心で、1ユニットの小規模なグループホームの場合は、入居人数の少しの増減で収益性が大きく変動するため、買収企業も慎重に検討していることがわかる。

2.買収希望企業について

画像1: 2.買収希望企業について

①業態別人気ランキング(複数回答)
買収ニーズ登録のある4,500社以上の企業の中で、特に買収ニーズの強い業態の上位ランキングが図5。様々な業態の買収を検討する企業も多いことから、複数回答となっている。

1位は「住宅型有料老人ホーム」。売却の問合せも多い一方で、収益を上げる仕組化に成功している事業者にとって、苦戦している施設を安価で買収することで、新たに施設を立ち上げるよりも、早期に成長を加速することができるためと考えられる。

2位は「グループホーム」。売却希望企業の項でも記載の通り、総量規制のあるグループホームは手堅い事業として捉えられており、特に2ユニット以上の規模の売却情報が出た場合には、人気が殺到する傾向にある。人気ランキングの上位に施設系の業態が多いのは、訪問系のサービスに比較して、人的要素(採用・教育等)の影響を受けるリスクが小さいため、経営が安定しやすいことが考えられる。

②エリア別人気ランキング(複数回答)

画像2: 2.買収希望企業について

続いて、エリア別に買収ニーズの強さをランキングしたのが図6。こちらも、様々なエリアへの展開を同時並行的に検討する企業が多いことから、複数回答となっている。

上位から「大都市圏」が中心にランキングに入っている。これは、人口に比例する要素も多分にあるが、少子高齢化が急速に進む地方都市においては、介護サービスの利用者の獲得よりも、介護の担い手の確保がより大きな課題となっていることも大きな要因と考えられる。

3.総括

同社では、これまでサポートしてきた数多くの介護事業者のM&Aにより、より効果的・効率的に最適なM&Aを実現するためのノウハウを蓄積してきた。介護保険は国の財政で成り立っているため、非効率な事業所の運営を中長期的に継続することは困難だが、ドミナント展開や他事業とのシナジー効果で収益の改善を図ることは十分可能であり、これによって介護スタッフの待遇の改善がなされ、より質の高い介護へと結びつくものと考えている。

また、業態・エリアに関わらず言えるのは、買い手の次の戦略にマッチした業態・エリアであれば、人気ランキングの低い業態であってもマッチングが可能であるということだ。そのため、同社ではこれからもより多くの買い手企業のニーズを集めることで、多くの方にM&Aの機会を提供し、より円滑な事業承継のサポートを推進していく。

調査対象:売却問合せ企業 1,173社  買収希望企業 4,622社
調査期間:2015年4月~2019年8月

介護M&A支援センターとは
ブティックス株式会社が運営する、介護事業所等に特化したM&A仲介サービスです。同社が全国8エリア(2019年8月現在)で主催する介護業界日本最大級の商談型展示会「CareTEX」に来場する経営者のニーズ等をもとに、全国の4,500社以上(2019年8月現在)の介護事業所等の買収ニーズをデータベース化し、効率的なマッチングを行うことで、業界最安水準の手数料体系を実現し、従来は手数料が高くてM&Aを断念し、廃業せざるを得なかった介護事業所等の事業承継のサポートを行っております。


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