画像1: IT×リアルの融合で不透明や非効率を解消したい(前編) - 株式会社よりそう 篠崎新悟氏

<トップインタビューvol.17 株式会社よりそう 取締役COO 篠崎新悟氏>

 株式会社よりそう(以下、よりそう)は、2009年に前身となる「みんれび」を創業。2013年に「よりそうのお葬式(旧:シンプルなお葬式)」と「お坊さん便」の提供を開始した。2015年にはAmazonに「お坊さん便」を出品し賛否両論の話題を巻き起こして注目を集めた。

 2018年3⽉には葬儀周辺のサービスをワンストップで提供するブランド「よりそう」を発表。現在、提携する葬儀社は900社、利用可能斎場数3,000ホール、社員数は110名を超え、着実な成長を続ける。今後は、相続や保険など幅広く老後に関わる領域もワンストップでカバーし、「老後がこわい」を解消するプラットフォームの構築を目指す。

 よりそうが描くライフエンディング業界の未来とは。2019年4月より同社取締役COOに就任した篠崎新悟氏からお話を伺った。

※本インタビューは3月上旬に実施しています。

昨年9月の増資の目的は?

━━2019年8月に20億円の大規模な資金調達を実行されました。この資金がWeb広告費用として投下されるのではないかという憶測も出ましたが、実際、どのようなことに投資されたのでしょうか。

 当社は現在、ライフエンディングに関わるお困りごとをワンストップで解決できるプラットフォームの確立を目指しています。昨年、調達した資金は、それを実現するために必要な人材の採用や、サービス認知向上のためのオフラインマーケティングの強化、時代のニーズに合わせた新サービスや新規事業の開発のために使っています。

 ご承知のとおり、Web広告は数年前と比べてかなりレッドオーシャン化していて、集客の難易度が非常に上がっています。この状況に対応するには、我々としては、広告費を追加投入するよりもデータをさらに活用したマーケティングを深化させることの方が重要だと考えています。

 それには、当社が創業以来積み上げてきたデータを粒度高く精緻に解析して、より効率の良いアプローチ方法を模索することに尽きます。また、お問い合わせをいただいたお客さまの成約率を上げるためにデータを網羅的に解析して、集客活動の効率性を高められるような取組みも進めています。

━━調達された資金は、主にマーケティング強化のために投下されたということでしょうか。

 我々の事業は、非常に多機能で、それぞれ大事ではあるし、それぞれ拡充していく必要があるんですけれども、強いて挙げるならお客さまとの接点の起点であるマーケティング、特に「4P」でいうプロダクト(製品)とプレイス(流通)の強化を急いでいるということでございます。

エンディング業界の可能性に魅力を感じて

━━篠崎さんご自身は、この増資の少し前、2019年4月によりそうへ参加されたわけですが、どんなきっかけがあったのでしょうか。

 2018年夏頃に、知人を通じて弊社社外取締役の福島氏(グロービス・キャピタル・パートナーズ ディレクター)に出会い、ライフエンディング分野で面白い会社があるよ、と声をかけられたところから始まっています。

 ちょうどその頃、前職のリクルートでの勤務が13年目を迎え、次のステージを考えていた時期でもあり、お互いのタイミングも合ってトントン拍子に話が進みました。

━━ライフエンディングの業界に行くことを決めたときの周囲の反応はいかがでしたか?

 多くの方はポジティブな反応だったのですが、中には、死に関係する仕事ということで少し敬遠されるような方もいらっしゃって、逆に僕もびっくりしました。

 私にとっては、エンディングはすごく大事なライフイベントで、そこに眠っている「不」の部分を解消できることに魅力しか感じなかったんです。サービスとして意義深く、マーケットとしても発展性の広い魅力あるものという印象で。お別れのシーンに対して、いかに価値の高いものを提供するかについてはまだ磨ける部分がある、そこに携われるっていうのは非常に嬉しいことだと思いました。

画像: エンディング業界の可能性に魅力を感じて

葬儀がかかえる「不」の部分とは。

━━葬儀の「不」である部分とは、どんなところだと感じていらっしゃいますか?

 お客さまの立場で考えたとき、まず1点目として、価格がわかりにくいところだと思います。この10年でずいぶん見える化が進みましたが、逆に分かりにくくなった面もあると思うんですよね。というのは、各社が提示するプランの前提条件が違うことも多くて、同じ条件での比較っていうのが難しくなってきている。まだまだ真の明朗会計を追求する余地はあると思っています。

 2点目として、故人が事前に準備されていた場合と、そうでない場合で満足度に相当大きく差がついてしまうという点です。終活という言葉が浸透し始めていますけど、実際に準備している方はなかなか増えない。そのレバーは何なのかを見つけて、ひたすら引くといったこともしたいです。

 3点目として、ライフエンディングに関するさまざまなサービスは、まだまだサービスレベルを向上できると思っています。ネットによって見える化が進み、業界のレベルが上がることで満足度が上がっていくサイクルは、他の業界でも起こっていますが、ライフエンディングのマーケットは、そのパラダイムシフトが訪れるのが少し遅めだったと思うんですよね。だからこそ、サービスレベル向上の伸びしろが引き続き残されていると感じています。

━━そのような中で、よりそうでは現在、どういったことに注力される計画でしょうか。

 これまでよりそうは、明朗会計、業界最安値を掲げてサービスを展開してまいりました。しかし、それでは単に安さを推奨するようなサービス体系になってしまっていた。今後は、お客さまとサービス提供側の情報の非対称性を乗り越えるために、圧倒的なわかりやすさ・ワンストップ・顧客満足度の向上を軸にやっていきたいと思っています。

━━価格の透明性以外の「不」の解消も、今後はより強く推進されるということですね。

 そうですね。我々は、ライフエンディングサークル(下図参照)という一連の流れが存在するという風に捉えていて……まだ若い時分に自分の祖父母や知人の葬儀に参列者として参加し、その後、喪主として葬儀を出す、お仏壇お墓を準備して供養する、そして、ご自身の最期に向かって終活や介護などが続いていくというものです。そして、そのときどきに悩みごとが出てくるんですね。

画像: 葬儀がかかえる「不」の部分とは。

 他の業界を見渡してもこのような、お困りごとが続いてくるという形は珍しいと思うんですよ。そして、よりそうは、お客様に圧倒的にわかりやすく、それらのお困りごとを一気通貫で解消できて、理想の旅立ちを実現できる、そんなサービスを作っていきたいと考えています。

お困りごとを一気通貫で解決するための「次世代Web」

━━ワンストップでお困りごとを解決するサービスの実現のために、まずは「プロダクト(製品)」と「プレイス(流通)」の改善強化を進められている、ということでしたね。

 プロダクトについては、お客さまの真のニーズに向き合った時に、今までの慣習を少し変えたりとかっていうやり方があるのではないかと考えながら、既存の商品パッケージの再編を進めつつ、新サービスの提案をさせていただいております。

 直近の取り組みでいうと、昨年11月に「お坊さん便」の「おきもち後払い」というサービスをローンチしていますが、これは、お坊さんとの関係性がない中で、事前にお布施を決めるのは難しい、でも「お坊さん便」を利用して実際に供養してもらったら、費用以上の気持ちを伝えたくなったと。そんな現代ならではのニーズにあった供養のあり方をご提案したものです。

 それから、先月発表した「後葬サポート」。こちらは昨今の新型コロナウイルスの影響で近親者のみで故人をお見送りして、終息を待って多くの参列者を呼んだ葬儀を改めて実施したいという声を我々のコールセンターでも複数件受けていたんですよね。それを少しでもサポートしたいという気持ちで始めました。

━━お客さまのお困りごとを少しでも多く解決されたいということなんですね。もうひとつのプレイスについてはいかがでしょうか?

 プレイスのところはWebの話でございまして、我々は今、「次世代Web」という形で取り組みを進めています。つまり、お客さまが一番初めに我々に気づいて接点を持つのはWebのPCまたはスマートフォンのページです。これを、いかにお客さまにとってわかりやすく、ニーズに応えられるものに仕上げていくか、ここが非常に重要でございます。

 というのは、私たちも多数、葬儀の事前相談は頂戴するんですけど、これまでは、お問い合わせを頂いたお客さまに必要な情報を渡しきれていない状況だったと思っています。それに、一度お問い合わせのあったお客さまがそのあとお困りごとがあるにも関わらずご支援できていなかったとなると非常に残念です。

━━情報が多すぎて知りたいことが探し出せなかったり、サービスが豊富であるがゆえに他のお困りごとも一緒に相談できるんだと気づかないで終わることって、よくありそうですよね。

 そこで、「yoriso.com」 のURL配下に全てのサービスを移動させるとともに、データを統合することを急ピッチで進めています。また、Web上に分かりやすく情報を並べるだけではなく、会員制度やマイページを強化することで、いかに個々のお客さまによりそったご案内、サポートができるかというマーケティングの深化が極めて重要だと考えています。

 葬儀の「不」のひとつとして検討期間が短いことで満足度に差がついてしまう点がありますが、どこからどうやって検討していただくのが良いのかとか、そういうもっと早い段階からのサポートをさまざまな角度からできるようにしたいと、今準備をしているところなんです。

━━ライフエンディングサークルのどの段階のお客さまにとってもわかりやすいWebサイトをつくることで、ひとりのお客さまのさまざまなお困りごとを解決できるようになるのですね。

後編につづく

【プロフィール】篠崎新悟(しのざき・しんご)

1980年4月、東京都生まれ。2002年にアリコジャパン(現:メットライフ⽣命)に新卒で⼊社。ダイレクトマーケティングビジネスに従事した後、2006年に株式会社リクルートにて住宅領域のポータルサイトを展開するSUUMO事業に携わる。2014年に同社子会社の株式会社ホームプロ代表取締役社⻑に就任、2017年より株式会社リクルートで⼾建・流通・請負営業統括本部の部⻑として活躍後、2019年4⽉より株式会社よりそうCOOに就任。

▼株式会社よりそう公式サイト
https://corp.yoriso.com/

<合わせて読みたい>
社会が変化するのはいつの時代も同じ。その変化に適したサービスを作れるか、それが重要 - 株式会社よりそう 芦沢雅治氏

よりそうが「お坊さん便の電話法要」を2020年4月14日より開始

終活から供養までのトータルサービス「よりそう」ほか新サービスをリリース~第4回 エンディング産業展~


This article is a sponsored article by
''.