トップインタビューvol.15 株式会社ユー花園 代表取締役社長 山田大平氏

 結婚式や葬儀など特別な場に飾る花、ホテルや路面店でのフラワーショップ展開など、首都圏の花卉(かき)分野で大きな存在感を放つユー花園。葬儀の世界では、様々な色形の花を用いた生花祭壇を設けるケースが多くなったが、同社の花祭壇の製作技術には誰もが一目置く。
 近年は、花祭壇ビジネスのフランチャイズ展開を進めたり、葬儀花の技術試験制度の創設を主導したりするなど、業界を牽引する存在でもある。
 多様な顧客ニーズにとことん応えつつ、社員たちの自己実現やキャリア形成も目標として追いかける、社長の山田大平氏へのインタビューを通じ、総合フラワーサービスカンパニー「ユー花園」の強さに迫った。

  

前期売上は約58億円。
そのうち、4分の3が葬儀花分野

━━ユー花園さんといえば、首都圏の葬祭業界では広く知られており、読者の多くは馴染みがあるとは思うのですが、簡単に事業の規模や構成などについてご紹介いただけますか。

 わかりました。当社の事業は大きく分けると祖業であるショップに加え、ウェディング、葬儀花といった分野に分かれます。社員数は約450名で、直前期である41期(2018年10月~2019年9月)の売上は約58億円でした。

 グループ会社の有限会社ユー企画では、東京都中央卸売市場の世田谷市場において場内仲卸を手がけています。元々はユー花園の仕入れを担うのが主たる役割でしたが、現在は、街の花屋さんや葬儀花を扱う会社への外販が約半分を占めています。

━━全体の中での葬儀花分野の位置づけなり現況について教えて下さい。

 供花や花祭壇など葬儀関連の売上は、当社(ユー花園)の売上全体の約4分の3を占めます。葬儀社様が直接のお客さまになりますが、取引社数は現在、200社を少し超えたぐらい。葬儀花を手がける件数で申し上げると、お通夜や告別式を行う案件で年に1.8万件、直葬で納棺花だけをお届けするようなものも含めると2.2万件といったところです。

画像1: トップインタビューvol.15 株式会社ユー花園 代表取締役社長 山田大平氏

━━売上で4分の3ということは、粗利や付加価値の多くを葬儀分野が占めるのでしょうか。

 そうとも言えません。以前は葬儀といえば、使うのは菊の花がほとんどでした。ものによってはある程度作り置きが可能で、仕入れもスムーズにできるなど、労務費や材料費がコントロールしやすいビジネスだったと言えるでしょう。

 しかし、近年は多種多様な花を使うようになり、喪家からの様々な要望を叶えようと、一品生産、受注生産に近いようなケースも増加しています。しかも葬儀の性格上、案件が発生してから納品までが極めて短く、原価管理が以前よりも難しくなりました。

 一方で、ウェディングの場合は、日程が前もってわかるため、計画的に準備や仕入れができます。当社の場合、取引先がラグジュアリーホテルに限られることもあり、近年は葬儀花より利益率は高くなっています。

━━その他にウェディングと葬儀の違いは?

 葬儀分野では、お取引願える葬儀社様を自ら開拓して、受注件数の増加を図っています。当社独自の鮮度を保つ流通の仕組みを整え、各地域でサービスを提供するための人材や機能を配備しながら、創業の地である世田谷から面でネットワークを広げてきました。現在は東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県を事業活動エリアとしており、当面これを拡大する計画はありません。

 一方、ウェディングについては、提携ホテルから受注をいただきそれに応えさせていただく形になります。ホテル内にインショップを設けるなど、実質的に営業所を作ったようなもので、それなりの仕事量や売上が確保される形になります。仙台(ウェスティンホテル仙台)や京都(パークハイアット京都)などは飛び地であるため、当社の仕入れや輸送の機能を使わず現地調達で対応しています。

━━創業の地である下北沢(本店)や本社のある桜新町のショップなど小売りについてはどのような位置づけなのでしょうか。例えば葬儀分野では、仕入れと実際の消費にギャップが生じることもあるかと。ショップはそれらを吸収する緩衝材のような役割を担っているのでしょうか。

 葬儀とは仕入れの段階から全く別系統で動いているので、そういったことはありません。ショップの貢献が最も大きいのは採用面ですね。今でこそ誰もが知る高級ホテルにインショップを出させていただくようになりましたが、葬儀花のビジネスでは我々の名前が表に出ることはほとんどないのです。

 ショップは一番多いときで8店舗くらい営業しており、「ユー花園」という看板のお店があちこちにあることで、一般の方々への認知が進み、当社への就職志望者の確保につながりました。

業容の拡大・進化とともに、
企業の在りようも変わるべきもの

━━御社はお父様である山田祐也さんが、創業された企業ですよね。山田社長が小さいときはどのような感じだったのでしょうか。

 当時は下北沢にあって……本当に「街の花屋さん」でしたね。住居を兼ねていたので、古参の従業員の皆さんには可愛がってもらいました。昔の花屋は、お彼岸とかお盆と行った物日を除くとわりと売り物がなくて、夏であれば鈴虫とかカブトムシ、金魚、小鳥などを販売していました。

 自分の幼い記憶の中では、花屋というよりベットショップのようなイメージに近かったように思います。私自身も動植物が大好きで、小学生の頃は「動物園に就職したい」とか「ムツゴロウ王国で働きたい」と言っていました。

画像: 応接室には、創業当時のユー花園の写真が飾られている

応接室には、創業当時のユー花園の写真が飾られている

━━学校を出てからはすぐにユー花園に入られたのでしょうか。

 いいえ、大学を出てすぐ電気設備工事を手がける企業に営業職として勤務しました。父は家業の継承を期待していましたが、その時点では何も決まっていませんでした。私としては、まずは実社会のことや、仕事をすることについて学びたい気持ちが強かった。その会社には4年ほどお世話になり、1997(平成9)年に当社に入りました。

━━お父様の著書『花屋一代』(講談社、2007年11月発刊)を拝見し、新宮(和歌山県)から上京して何年も無給で修業され、ようやく独立してと、大変な苦労を重ねながら事業を拡大させていかれたことがわかりました。ただ……本の中で描かれている様子と、顧客の要望に叶う花祭壇をCGでシミュレーションする現在の先進的な姿、両者のギャップの大きさに戸惑うのですが(笑)

画像2: トップインタビューvol.15 株式会社ユー花園 代表取締役社長 山田大平氏

 創業者である父のことを尊敬していますし、小さなフラワーショップの頃から当社を支えてくれた古参の社員の方々に対する感謝の気持ちが変わることはありません。ただ、業容の拡大や事業内容の進化とともに企業としての在りようも変わっていくものだと思います。

 先代の頃から続く当社の重要なDNAの一つは、できる限りお客さまの要望に応えるために力を尽くすことです。その思いや姿勢は今も変わりありませんが、以前はややもすると精神論が先だち、材料費や時間の制約なしにそれをやってしまうところがありました。労務管理はもちろん、納期や採算の管理といった点で、今の時代もそれを続けるわけにはいきません。

 2011年に社長に就任するまで約10年間、私は常務取締役の立場だったのですが、その間に、できるだけ効率的にまた品質のバラツキなく行えるような仕組みを整えていきました。

━━工程管理、原価管理、品質管理……工事の施工管理をやっていた会社での勤務経験が生きたのでしょうか。

 そうかもしれません。私のいた会社は、トヨタのカンバン方式を取り入れていて、半年毎にコンサルの強い指導が入りました。緻密な計画を立ててどのような段取りで進めるか、実績はどうで差異はどうして生まれたのか……我々若手社員も資料作りなどを担当しました。

 特に私は営業だったので、予めきちんとした実行予算を組まないと仕事になりません。これがちゃんとできて「この工事は計画通りやればこれぐらいの利益が見込めそうだ」となり、着手できるわけです。入社当時のユー花園では、そうした計画がなくどんぶり勘定でした。

 数字も計画もないということは、評価する尺度がないということです。それでは「この部分をこういう風に工夫することで、10%程度効率化できそうだ」などと改善や進歩も生まれません。そういう点を一つずつ変えていきました。

花祭壇の普及は
北海道と九州から始まった

━━御社も力を入れられている花祭壇について書かれた記事で、首都圏発で徐々に地方に広がりつつあるといった記述をいくつか拝見したのですが……花祭壇が浸透した経緯や地域差について教えて下さい。

 首都圏からというのは正確ではないと思います。当社との関わりの中で経緯をお話ししますと……最初、40年ほど前に、菊の花を碁盤の目のように配する挿し方をされている花屋さんが京都にあり、当社はそこに社員を派遣して勉強させてもらいました。

 その後、北海道で動物などを表現した祭壇を手がける方がいらして、それを教わろうと当社からは20人ぐらい派遣したと記憶しています。当時私は大学生でお店を手伝っていたのですが、夏休み・冬休み・春休みと長期の休みが取れるときに自身もそこにいって通算何十日間も学ばせてもらいました。

 当時、九州の花屋さんもそこに学びに来られていて……そんな流れで、北海道と九州でいち早く生花祭壇が広まっていきました。その後に、新しいものをどんどん取り入れる東京圏でも普及し、それを追う形で他の地域へも少しずつ浸透しつつある━━そんな状況かと思います。

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