画像: フランスベッド株式会社 インテリア事業本部 インテリア営業企画部 インテリア商品企画開発課 マネージャー 平戸康弘氏

フランスベッド株式会社
インテリア事業本部 インテリア営業企画部 インテリア商品企画開発課
マネージャー 平戸康弘氏

2018年11月、「メモリーナ」シリーズを発表し、仏壇市場に参入した寝具関連の大手メーカー、フランスベッド。家具業界のみならず仏壇・仏具業界でも大きな話題となったが、参入のきっかけや今後の展開を、インテリア事業本部の平戸康弘さんに伺った。

参入のきっかけは“現場の声”だった

━━仏壇事業に参入したきっかけを教えてください。

当社は、一般家庭用ベッドを扱うインテリア健康事業以外にもメディカルサービス事業を展開しており、介護施設に入居される方のサポートも行っています。

その中で、施設に入居する際の困りごとの一つが、自宅にある仏壇を施設内に持って入れないことでした。実際に、お客様から直接「どこへでも持っていけるようなコンパクトな仏壇はありませんか?」と相談されることも少なくありませんでした。

そうしたお客様の声を現場担当者から伝え聞いた当社の社長が、ご要望に応える形で開発をスタートさせたのがきっかけです。

画像: フランスベッドグループでは、福祉用具貸与等を行うメディカル事業がグループ全体の売上の6割を占める。

フランスベッドグループでは、福祉用具貸与等を行うメディカル事業がグループ全体の売上の6割を占める。

━━“現場のリアルな声”を商品化したのですね。

開発のきっかけはお客様の声でしたが、家具を扱うメーカーとして、もうひとつ注目していたのが、昨今の住宅事情です。デザイン的に従来型の仏壇の設置を想定していない家や、そもそも和室のない家が増えている点は気にしていました。

そこで、リビングに置いても違和感のないような、モダンでコンパクトなデザインの仏壇であれば受け入れてもらえるだろうと考え、本格的に仏壇市場への参入を決意しました。

━━商品を開発するにあたってこだわった点は?

やはり大きさとデザインですね。仏壇を購入するパターンには2通りあって、新規はもちろん、買い替えというケースもあります。介護施設への入居もそうですが、一軒家からマンションに移り住むタイミングで仏壇を買い替える方も多いようです。

それまで使っていた仏壇が大型だと、新しい仏壇が小さければ、サイズによっては位牌や仏具が入りきらない恐れがあります。そういった点では、ある程度の大きさは確保しないといけない。

また、リビングに設置することも想定しているので、キャビネットやチェストなどの家具の上に置いても問題ないように、奥行きや幅を考慮しました。デザインも洋室に設置して違和感のないものを採用しています。

━━設置場所をイメージした上で開発されたのですね。

その他にも、洋室に設置するとなると、仏壇の前に正座するのではなく、椅子に腰をかけるほうが自然です。加えて、高齢者の方の足腰の負担を考慮した結果、下段にスツールを収納できるタイプも開発しました。

お手入れを気にされる方も多いので、膳引きにガラスをはめたタイプも用意しています。蝋がたれてもすぐにはがせますし、線香やろうそくが倒れても焦げる心配もないので、お客様からはご好評をいただいております。

材料を共有して小ロットでの受注を可能に

━━ベッド寝具メーカーとしての強みを活かした点はありますか?

一番の強みは、家具と同じ材料で仏壇を作れる点です。仕入れた材料を共有できるので、最小ロット10台から受注できます。つまり、家具店や百貨店から発注をいただいた際に、大幅な在庫を持たずに提供できるということです。

仏壇の納期は四十九日が一つの目安となり、それに合わせて販売店も商品を用意する必要があるので、本来ならある程度の在庫を確保しておくべきです。

しかし、できれば在庫を持ちたくないというのが販売店の本音でしょう。当社の生産方式であれば、そうした悩みも解消できます。

これが仏壇だけを作っているメーカーであれば、少なくても50台以上を製作しなければならないので、どうしても在庫が発生します。その点、当社は小ロットで提供できるので、在庫リスクを軽減することが可能なのです。

━━家具店での展示方法も工夫されているとか。

仏壇は一般的に仏間など、家の奥の人目を避けた部屋に設置する風習があります。しかし、当社としては、メモリーナを家族が集う部屋に置いていただきたいという想いがあります。

九州にある家具専門店では、そういった当社の考えをご理解いただき、リビングコーナーに置いてもらっています。実は、当初は和家具コーナーに展示していたのですが、デザインがモダンなこともあり、同社の会長が「インテリアとして扱ったほうがよい」と、展示場所を変更したのです。

結果、売上が飛躍的に伸び、月間販売台数30台を達成。この事例からメモリーナを販売している他店でも、展示場所をリビングコーナーに変更するケースが出てきています。

おそらくお客様としても、当社の仏壇を単品ではなく、リビングのインテリアと一緒に見るほうが、自宅に置いた際のイメージが湧くのだと思います。それがヒットにつながった理由ではないでしょうか。

画像: インテリアのひとつとしてリビングやベッドルームに

インテリアのひとつとしてリビングやベッドルームに

━━寝具メーカーとして、仏壇業界にどんな印象をお持ちですか?

あくまで家具業界と比較した場合ですが、仏壇業界はクローズしたマーケットという印象があります。ユーザー視点に立つと、価格設定が不透明なんですね。

利益幅だけを見ても家具とはかなり感覚が違っているので、当社もメモリーナの価格設定には頭を悩ませました。結果として、既存の仏壇よりはかなり安価になりましたが、当社としては初めから他社との価格競争を考えておりません。

当社が何より大切にしているのは、時代のニーズに合わせたデザイン、仕様、価格の仏壇を提供すること。「実家には立派な仏壇があるけれど、今の住まいにも位牌などを置けるささやかな仏壇がほしい」そんな都市部に住むユーザーの気持ちに応えた商品だと思っています。

業種の垣根を越えてさらなる販路拡大へ

━━今後の展開を教えてください。

今後はさらに販路を拡大したいと考えています。そこで、家具専門店や百貨店だけでなく、葬祭業社や互助会などを対象にした、オリジナルデザインを用いた商品を開発する予定です。

また、当社は住宅メーカーとも取り引きしているのですが、そうしたルートからの商品開発も進めています。

近年、和室のない新築物件が多く、その代わりに仏壇置き場を設けている住宅メーカーも増えています。その置き場所は決して広くなく、コンパクトなものを想定しているので、当社商品であれば設置が可能です。

ただし、住宅メーカーによって寸法や置き場所、高さの制限などに違いがあるので、当社が汎用性のある商品を開発さえすれば、さらなる需要が生まれる可能性を秘めています。

━━まだまだ市場に開拓の余地がありますね。

今、新たに着手しているのがペット市場への参入です。当社はペットインテリア協会に加盟していて、ペットのいる家庭をターゲットにした商品も開発しています。

2019年11月に行われたペット用品の展示会に参加し、キャットウォークと組み合わせたベッドなどを発表し、あわせてペット用の仏壇を試験的に展示したところ、かなりの反響を得ることができました。

発売は今春を予定していますが、展示会で現物を見たお客様から商品への要望をたくさんいただくこともできましたので、そうした声も反映して完成度を高めていきたいと考えています。

画像: 業種の垣根を越えてさらなる販路拡大へ

▼フランスベッド株式会社公式サイト

写真/大塚日出樹


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