葬儀を経験してきた人間が活躍する場を
いろんなところにつくっていきたい

──なるほど。では、これから手がけようと考えられている部門にどんなものが?

「飲食に関してはすでにいろんなことをやっていますが、最後は日常食、お年寄りの方が自宅で料理をつくることもできなくなった。そこに日々、食事を届けるサービスですね」

──宅配サービスですか?

「そうです。これは安否確認に直結する仕事で、毎日家にうかがうことになる。食事に困っている人は、洗濯も掃除も困っているでしょう。じゃあ、ホームメイドサービスの会社をやってみようか、クリーニング屋さんをやろうか。自分の生活を、ここのグループの会社にゆだねていけばなんとかなる。そう思ってもらえる関係性を築いた延長線上に、葬儀があればいい」

画像: 仕出し料理のパンフレット

仕出し料理のパンフレット

──ああ、なるほど。一周して葬儀に戻ってくると。

「でも、それは葬儀をとるために戦略を仕掛けるのではなくて、いろんなことをやっていて『結果的に葬儀が転がり込んできたね』という会社にしたいんです。自然の流れで」

──ひとは必ず死にますからね。

「そうなんです。さきほどの不動産屋の話も、生前、家は持っているんだけど高齢者住宅に入りたい。その入居資金がないという方がいたら、家を担保にして入居資金を調達するということもできるでしょうし。考え出していくと無限に広がるんです。その構想を確実に実現させていくには『卒業生』が必要になる。僕は葬儀屋で始まっているので、葬儀を経験してきた人間が活躍する場をいろんなところにつくっていきたいんです」

──その中心に葬儀がある?

「そうです。葬式は究極のドキュメント。人の生き方が十人十色であれば、人の死に方も十人十色。それを目にする仕事ですから」

画像4: トップインタビューvol.10(後編) 株式会社めもるホールディングス 代表取締役 村本隆雄氏

──村本さんは『葬儀屋という仕事』が好きですか?

「好きです。究極のサービス業だと思っています。精神状態が平常でないお客さまとコンタクトをとって、すこしずつ関係性が近くなって、いつしか仕事を超えた関係性ができていく。それが、自分がやっていたときの現場の醍醐味でしたから。『あなたにやってもらってよかった』と言っていただけた一言。そういうのがモチベーションになっていましたね。たぶん、うちのプランナーたちもそうだと思いますよ」

──そういえば葬儀を担当される社員さんから聞いたんですが、葬儀の間に「三つのサプライズ」を提供しないといけないそうですね。

「あの三つを考えたのは、当時の専務の平川という人間、いまはテラスデザインの社長をやっていますが。なぜ三つなのかというと、三つとなるとそのお客様にいろんな意味で興味をもって話を聞かないと拾えないんです。

 究極、サービス業はさりげなさがカッコイイと思っていて、自分はもともと生花の配属で、祭壇もやったりしていました。おばあちゃんの好きな花はなんだったんですか? ヒマワリと聞くと、ここぞとばかり向日葵の祭壇ができあがる。ご家族の方が『ばあちゃん、ヒマワリに囲まれてよかったねぇ』と言ってもらえると、自分も満足した」

 しかし、キャリアを積むにつれ、好きな花を問い、それを飾るのでは喜ばれはしても想定内。サプライズは相手が忘れるくらい、さりげなく聞きだしてこそだと考えるようになった。

「たとえばベッドルームの一輪挿しを、向日葵にする。これに気づいたときのお客さんのインパクトはでかいですからね」

──アンケートではないということですね。

「そうです、そうです。でも、最初は三つ用意しないといけないというので、みんなガチガチになって聞くんです。『趣味は何でしたか?』って。そのうち磨かれてきて、さりげない会話の中から見つけ出していく。これはどんな仕事にもつかえることですよね。相手に興味をもつということから始めるのは」

──最後にお聞きします。村本さんは「お葬式」をする意味は何だと考えていますか?

「お葬式はどこまでいっても、亡くなった人のためにあるものです。亡くなった人を中心に、ご家族縁者が集まる。故人に感謝していたりするから集まるんだと思います。その感謝の気持ちを、心のなかに閉ざしたまま見送るのではなくて、『ありがとう」という言葉にして送り出す。

 これはうち特有だと思いますが、故人様に語りかける場面をつくっています。なぜあえて声にだすことに意味があるのか。セレモニーは亡くなった人のためのものであるけれども、残された人はまた日常生活にもどらないといけない。人生のリスタート。そのためには、自分が声にだして伝えようとすることが大切なんです」

インタビュー・構成=朝山実

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最近読んだこの本

村本社長に、最近読んだ本の中でおすすめの一冊をご紹介いただきました。

『多動力』堀江貴文著

「賛否のある人ですが、教育について当たり前と思われていたことは当たり前ではない。そういった目をもつことの重要性を語っている。これは葬儀という仕事もそうで、ルーティンになっていくことの中には、外の人が見たときにおかしなことがいっぱいある。そこに気づける人間は自分の仕事をいい意味で疑い、いい意味で打ち壊していくことができる。小さな変化を日々の中で起こすことのできない人間は、大きなイノベーションを起こすことは絶対できません。

たとえば、オンデーズという眼鏡屋の社長さんが毎日朝めしを変えているんですね。変えることで、何か変えようとするときに思考回路が生きてくると言う。この人、すごいなぁと思いました。それと通じることが書かれていて印象に残りました」

【プロフィール】村本 隆雄 (むらもと たかお)
1972年生まれ。北海道恵庭市に本社を構える老舗葬儀社の3代目。91年メモリアルむらもと入社、99年取締役、2010年代表取締役に就任。18年にめもるホールディングスを設立。代表取締役に就任。
恵庭市、札幌市、北広島市に葬祭会館「ウィズハウス」「香華殿」を12拠点に展開。ライフエンディングサービスの具現化を加速し、介護事業、飲食事業、供養・アフターサポート事業に及ぶグループの総統括を務める。

▼めもるホールディングス公式サイト
https://memoru.co.jp/

<メモリアルむらもとのキラリビトたち>


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