違法? 合法? グレイゾーン?
「海洋散骨」をめぐる現状
6月28日と29日の2日間、パシフィコ横浜(横浜市西区)で「フューネラルビジネスフェア2018」(綜合ユニコム株式会社主催)が開催された。業界では屈指の葬祭サービス・ライフエンディングサポートシステムの総合展示会&シンポジウムだ。
一般社団法人日本海洋散骨協会は、埋葬サービスゾーンに出展。村田ますみ代表副理事によるセミナー「違法? 合法? グレイゾーン? 高まるニーズに対応するための海洋散骨基礎知識」も行われた。村田さんは、株式会社ハウスボートクラブの代表も兼務しており、12年間海洋散骨ビジネスに取り組んできた経歴の持ち主。ここで、そのセミナーの概要を紹介してみたい。
増加する「海洋散骨」に向けて
ガイドラインづくりのために協会設立
日本における海洋散骨の現状を、村田副理事は「右肩上がりに増えて、昨年(2017年)は約1万件」と推測する。
「墓じまい、お墓の継承問題や、数年前に巻き起こった『千の風になって』ブームによる認知度アップなどが背景にあります。しかし、その半面で、いまだに『違法?合法?グレイゾーン?』といった話を耳にします」
「海洋散骨におけるルールづくりを目的に設立したのが、日本海洋散骨協会です。今後、海洋散骨の需要増が見込まれる中で、ルールなしでは風当たりも当然強まるでしょう。そこで協会が中心となってガイドラインを作成し、4年前の2014年12月に施行されました。現在、本協会には約40社が加盟しています」
新規参入者が相次ぎ
二極化が進む「海洋散骨」業界
散骨には、お墓と違って墓石・墓標がない。ただし、お墓がないからと手を合わせる必要がないわけではない。
「散骨の場合、散骨した場所(緯度、経度、日時)の証明書が発行されますから、そこまで船で行って手を合わせるメモリアルクルーズといった方法があります。また、手元供養にするケースも多いようです。お骨をすべて撒くのではなく、少し残して加工するなどして手元に置いておく方法です」
海洋散骨業界の最近の傾向について、「こだわりを持って海洋散骨ビジネスを行う人と、ビジネスチャンスと捉えて参入する人の二極化が進んでいる」と村田副理事は語る。
「前述のように、今後墓じまいを希望する人が増え、海洋散骨への注目度もアップするでしょう。ビジネスとしての魅力を感じて新規や異業種からの参入が予想されます。ここに少し危機感を抱く業界関係者も多いようです」
昨年9月には「海洋散骨アドバイザー」
認定制度もスタート
「新規や異業種の参入増加で危惧されるのが、低価格競争。品質低下、モラルの低下、何でもありといった状況も十分に考えられます。環境問題については、お骨に含まれる六価クロムには環境破壊につながる有害物質が含まれるので、協会として還元剤を使用して無害化処理を行っています。また、倒産による情報紛失といった問題についても、協会では、加盟店で施行された海洋散骨の情報(緯度、経度、日時)を30年間バックアップ保存し、万が一の場合でも施行者の情報は永続的に記録・保存する体制を整えています」
さらに協会では昨年9月から、海洋散骨について体系的な知識を持って消費者にアドバイスができる専門家「海洋散骨アドバイザー」認定制度もスタートさせた。8月24日には海洋散骨開業支援セミナー(東京・新橋)が開催されるので、興味のある人は協会HPをチェックしてみてはいかがだろう。
<会社概要>
一般社団法人日本海洋散骨協会
〒130-0002 東京都墨田区業平3-8-4 ビレッジマルタニ3F